今の生活を変えるために就職してお金を稼ぎたいという時には、就労移行支援を利用して、企業で働くための訓練や準備をすることがおすすめです。
就労移行支援は、企業で働くための訓練や支援をうけることができる通所型の福祉サービスです。
仕事をするための知識や能力を身につけたうえで、スタッフのサポートをうけながら就職活動を行うことができます。
さらに、就職後も安定して働き続けるための職場定着支援をうけることもできます。
就労移行支援の対象、利用料金、利用の流れ、事業所の選び方などについてご説明します。
就労移行支援とは
就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づく福祉サービスのひとつです。
企業などへの就職を希望している18歳から65歳未満の障害者に対して、働くために必要な知識や能力を身につける訓練をしたり、その人に合った仕事探しのサポートをしたり、就職後の職場定着支援をおこなったりしています。
2017年4月時点で、就労移行支援のサービスを提供している事業所は全国に3,256ヶ所あり、32,611人が企業などで働くことを目指して就労移行支援を利用しています。
参考情報 :障害者の就労支援対策の状況|厚生労働省
就労移行支援の対象・利用者
就労移行支援を利用するための条件と、実際に利用している人たちの障害種別と年齢層の割合は以下のとおりです。
対象者
就労移行支援を利用するためには、以下の3つの条件を満たしている必要があります。
・身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病などがあること
・企業などで働くことを希望していること
・原則として18歳から65歳未満であること
※障害者手帳を持っていない場合にも、医師の診断や自治体の判断で利用できる場合があります。 主治医や自治体の福祉の窓口に相談しましょう。
利用者の障害種別の割合
2017年9月に厚生労働省が発表した資料によると、利用者の障害種別と年齢層の割合は以下のとおりです。
利用者の障害種別ごとの割合は、身体障害者8%、知的障害者37%、精神障害者54%、難病等対象者等1%です。
精神障害者の利用が半分以上を占めていることがわかります。
利用者の年齢層の割合
利用者の年齢層の割合は、20歳未満13%、20-29歳が36%、30-39歳が22%、40-49歳が20%、50-59歳が8%、60歳以上が1%です。
幅広い年齢の人が利用していることがわかります。
就労移行支援の利用料金
就労移行支援の利用料は1割が自己負担で、残りの9割は自治体が負担します。
さらに、世帯所得などに応じて月ごとの負担額が軽減される「負担上限額」が設けられています。
「負担上限額」の区分は4つで、生活保護受給世帯の場合には自己負担は0円です。
市町村民税が非課税の世帯の場合にも自己負担は0円です。
収入がおおむね600万円以下の世帯の場合には、「一般1」に該当するので月ごとの自己負担は9,300円です。
上記以外の収入の場合には「一般2」に該当するので月ごとの自己負担は37,200円です。
ただし、就労移行支援事業所に通うための交通費や昼食代はこの中に含まれません。
生活保護(生活保護受給世帯) | 0円 |
低所得(市町村民税非課税世帯) | 0円 |
一般1(市町村民税課税世帯) | 9,300円 |
一般2(上記以外) | 37,200円 |
就労移行支援の利用の流れ
就労移行支援を利用するためには、以下の4つの手続きを進める必要があります。
それぞれの手続きの概要を説明します。
①就労移行支援事業所を探す
自分の希望に合う就労移行支援事業所を探して、見学、利用相談、体験利用をします。
②福祉の窓口に行って利用申請をする
住んでいる自治体の福祉の窓口に行って、「就労移行支援の利用をしたい」と伝えて申請を行います。
③認定調査をうける
就労移行支援の利用申請をすると、自治体の職員からの認定調査をうけることになります。
現在の生活状況や働く意欲について、職員からの質問に答えましょう。
④就労移行支援事業所と利用契約をする
就労移行支援の利用が認められた場合には、自治体から「受給者証」が公布されます。
「受給者証」とは、福祉サービスの利用申請が認められたことを証明する重要な書類です。
住所、氏名、生年月日、サービスの種類、その支給量(利用できる日数や時間数)が記載されています。
利用を希望している就労移行支援事業所に「受給者証」を持参して、利用契約を交わすことで、就労移行支援事業所での就労訓練を開始することができます。
就労移行支援事業所の選び方
就労移行支援は、事業所ごとに対応している障害種別や訓練の内容が異なります。
自分に合った場所を選ぶために、以下の5つのポイントを参考にしてください。
①通い続けられる距離にあるか
②設備や雰囲気が自分に合うか
③スタッフと話した実感をたしかめる
④訓練内容・カリキュラムはどうなっているか
⑤就職実績をたしかめる
就労移行支援についてのQ&A
就労移行支援について、よくある質問にお答えします。
就労継続支援A型・B型と就労移行支援は何が違うのでしょうか?
どちらも障害者の就労を支援する福祉サービスですが、目的と内容と条件が異なります。
就労継続支援A型・B型は、障害者が作業所などで働くための「福祉的就労」を提供するサービスです。
就労移行支援は、一般企業の障害者雇用枠などで働くための「就労支援」を提供するサービスです。
就労移行支援は工賃や給与をもらえますか?
原則として工賃や給与はありません。
訓練のための軽作業をすると工賃がもらえるところもありますが、そういうところは珍しいです。
昼食代と交通費は自己負担ですか?
原則として昼食代と交通費は自己負担です。
ただし、一部の就労移行支援事業所ではお弁当がでています。
また、交通費に補助金が支給される自治体もあるので、自治体の福祉の窓口に確認しましょう。
就労移行支援に通うことは、就職活動でのアピールポイントになりますか?
障害者雇用に積極的な企業ほど、就労移行支援事業所などの支援機関と繋がりがあることを評価する傾向があります。
「就労移行支援事業所に週5日3ヶ月間通うことができました」という実績を示すことができれば、就職活動で有利に働く可能性があります。
就労移行支援事業所から就職先を紹介してもらうことはできますか?
原則として職業の紹介や斡旋は行っていません。
就職先の斡旋はハローワークや他の支援機関を利用しましょう。
ただし企業から就労移行支援事業所に求人が来た場合には、紹介されることも稀にあるようです。
精神科のデイケアに通いながら、就労移行支援にも通うことはできますか?
デイケアに通いながら就労移行支援事業所に通うこともできます。
主治医、デイケアのスタッフ、就労移行支援事業所のスタッフに相談した上で利用しましょう。
就職した後もサポートをしてくれるのですか?
原則として、就職してから2年間は「職場定着支援」をうけることができます。
職場の上司には言いにくいことを相談したり、客観的な意見をもらったりできるので、職場定着支援はとてもありがたいです。
就労移行支援以外にも障害者が働くための支援機関はありますか?
就労移行支援以外にも、就労支援センターや障害者就業・生活支援センターなどの相談・支援機関があります。
まとめ
就労移行支援の対象、利用料金、利用の流れ、選び方などについてご説明しました。
自分の望んでいる働き方を実現するために、たくさんの人が就労移行支援を利用しています。
就職活動と並行しながら就労移行支援を利用することもできます。