スズキR06Aエンジン考察の続きとジムニー搭載に期待すること

※過去ブログの転載なので公開日との時制のズレがあります。ご了承ください。

先日、新型キャリィにてついにR06Aエンジンを縦置き、さらに5速MTとの組み合わせが実現し、これは次期新型ジムニーでもR06A搭載が確実となったことから、今回はそれに期待することや、さらにつっこんだR06Aエンジンをチューニングする上での構造上の利点、欠点、問題点、あとノーマル状態に対する個人的な改善要望みたいなことを書きたいと思います。

<参考> →R06Aエンジンデビュー時に書いたK6Aエンジンとの比較の記事

↑これはキャリィのR06Aエンジンの写真ですが、今のところはNA(自然吸気)のみです。もちろん、ジムニーに搭載する際にはターボモデルのみとなるはずですから、ここから先書くことはすべてターボ仕様を前提として話を進めますことをご了承ください。

とにかく「ノーマルで軽自動車最大のトルク」がほしい

今までR06Aエンジンは横置き+CVTとの組み合わせしかなかったため、最大トルクもCVTとのマッチングからターボでも9.7kg-m/3000rpmとやや控えめなスペックだったのですが、マニュアルミッションとの組み合わせでは今まで抑えられていたトルクを解放し、軽自動車最大のトルクを実現させてほしいところです。

個人的な希望では、最低でも11.5kg-m以上、これを3000rpm前後で達成できれば万々歳ではないかと思います。

レギュラーガソリン仕様ではさすがに12kg-mまではちょっと難しいと思いますので。 その手法としては若干、圧縮比を落として逆にブースト圧を上げ、さらにVVTのチューニングで実現させるという方法もありかと考えます。

R06AはK6Aよりもボアが小径なので、耐ノッキング性については余裕があると思いますからK6Aよりも高圧縮のままでハイブーストにすることも充分可能だと思われますので。 以前にも書きましたようにR06Aエンジンは構造上、高回転化およびハイパワーチューンは望めないと思われますので、まずは純正状態で低回転から実用回転域でのトルクを重視した方向でF6AやK6Aと差別化していくしかないと考えるのです。

●そのうえで強化してほしいところ

1)まずはコンロッドの剛性アップを

見てのようにK6Aと比べてR06Aエンジンのコンロッドは大端部、とくにベアリングキャップが薄くてペラペラで、見るからに剛性が足りません。 これでは高回転でピストンの強大な慣性力によって生じる上下方向への力で大端部が縦長に変形してしまう「クローズイン」現象が生じて、メタルクリアランスがなくなり、メタルの焼きつきにつながる危険性があります。 ですので、ぜひターボエンジンではコンロッドの強化をしていただきたいところです。

最悪、コスト面などの理由でコンロッド本体は無理な場合でも、このキャップ部分だけでもK6Aのコンロッドと同じように補強リブをつけるなどして剛性を強化していただきたいところです。

2)クランクシャフトのメインベアリングキャップのラダービーム追加を

↑R06AエンジンのクランクメインベアリングキャップはK6Aエンジンのようにすべてのベアリングキャップが一体化した構造ではなく、各ジャーナルが独立した鋳鉄製のものとなっており、そのためこのベアリングキャップ部分の剛性が不足し、メインジャーナルの軸受け部分が前後方向に振動しやすくなっています。

↑クランクジャーナルおよびメインベアリング部を横から見たところ。 このように独立式のベアリングキャップでは微視的には図のようにブロックのベアリング部が前後に倒れるように振動してしまうのです。

そのため、この部分の剛性を上げるためには各ベアリングキャップを何らかの方法で連結することが有効な対策となります。 ちなみに、エンジン騒音の90%はこの軸受け部分の振動が元となっているそうです。

↑これはK6Aエンジンのラダービームロアケース。 このようにすべてのクランクメインベアリングキャップが一体化されているとクランク周りの剛性が非常に高くできるので、本格的なレーシングエンジンではこの構造が当たり前のように採用されているのですが、残念ながらR06Aはこのような構造はしておりません。

そこで、せめて少しでもベアリングキャップの剛性を上げるために、日産がSR20でやっていた方法と同じ手法でラダービームを追加して剛性アップをしたら効果的なのではないかと思うのです。

↑日産SR20エンジンの鋳鉄製メインベアリングキャップと、それを連結するアルミ製のラダービーム。

各ジャーナルごとに独立したベアリングキャップの上から一体型のハシゴ状の補強ビームで共締めするものです。

この方法ならK6Aのラダービームロアケース方式には及ばないものの、単純な独立式ベアリングキャップのみよりはずっと剛性アップが図れるはずです。 この構造はコストメリットが大きいのでR06Aでも採用してほしいです。

3)サージタンクとインマニを樹脂製からアルミ製にしてほしい

今までのR06AはNA、ターボともサージタンクとインマニはオールプラスチック製ですが、やはりハイブーストでの耐久性などを考えると重量が重くなるというデメリットはありますが、従来のアルミ鋳造製にしてもらったほうが安心感があります。 それと同時に、中回転域から高回転域でのトルク特性改善のためにサージタンクの容量アップもおこなって欲しいところです。 もちろん、インタークーラーも可能な限り大型のものを。

↑MRワゴン等に積まれる横置きR06Aターボエンジン。見てのようにサージタンク、インテークマニホールド

共にプラスチック製です。しかも、サージタンクと呼べる容量はほとんどありません。 ジムニーに搭載する

ときには、ぜひともアルミ鋳造製に、なおかつサージタンクもある程度の容積を確保してほしいところです。

その他R06Aエンジンの構造上で気づいたところなど

1)バルブリフトが意外と少ない?

↑この写真はターボモデルのインテークバルブがほぼフルリフトしているところです。正確な寸法はわからないですが、案外バルブリフト量が少ない気がします。 効率のいい吸気のためにはバルブ径の1/3近いリフト量が欲しいところですので、このあたりもまだ改善の余地があるような気がします。 そういえばK6Aではさんざん問題になった排気バルブのトラブルはR06Aでは完全に解消されているのでしょうか。これもやや気になります。

それと、R06Aは燃費改善のためフリクションロスを徹底的に少なくすることから、非常にバルブスプリングが弱いので、サージング限界が低いことから、これも高回転化チューニングの際には対策が必要になります。

2)シリンダーライナーは「鋳込み式のドライライナー」

私は今までR06Aのシリンダーライナー(スリーブ)はK6Aと同じ鋳鉄製のウェットライナーを圧入してあるものだとばかり思っていたのですが、じつはアルミブロックに鋳鉄製スリーブを鋳込む構造になっていました。

↑よく見てください。R06Aではライナーは独立した圧入式ではなく、ブロック鋳造時に同時に薄い鋳鉄製ライナーを鋳込んであります。 これは日産のSR20エンジンとまったく同じやり方です。 しかも写真でもわかるように各シリンダーは完全に独立させずに連結され、剛性を高めるいわゆるサイアミーズドシリンダーとなっています。

そしてそれぞれのシリンダー間の上部数ミリにスリットを入れて冷却水を通し、シリンダー上部を効果的に冷却するという方式で、これもSR20エンジンと全く同じ構造です。 この構造はライナー上部の冷却面では有利なのですが、K6Aみたいにスリーブを打ち替えることはできませんので、もしホーニングで取りきれない傷がシリンダーについた場合はブロックごと新品交換しかなくなります。 当然、ライナーを打ち替えてボアアップなんてこともできないことではありませんが、以下に説明する理由から非常に問題が多いのではないかと思われます。

↑これはSR20エンジンをボアアップのために新規製作スリーブを入れるための加工した写真ですが、見てのようにもうギリギリの肉厚しかありません。 ここに鋳鉄製のツバ付きスリーブ(ライナー)を入れるのですが、もっとも放熱が大切なシリンダー上部の熱伝導が悪化するため、最悪はノッキング発生の心配もあります。もしR06AエンジンをボアアップするとしたらこのSR20とまったく同じ加工をすることになりますが、SR20の場合はまだブロック上面がクローズドデッキなので多少は強度が保てますが、R06Aはオープンデッキのサイアミーズシリンダーなのでスリーブ部、とくにシリンダー上部アッパーデッキの強度、剛性が保てないためシリンダーが首振り振動し、それが原因となってヘッドガスケット吹き抜けなどのトラブルに繋がりやすいということです。

以上の理由から、たしかに加工だけならR06AもSR20と同じ手法でボアアップもできないことはありませんが、冷却と強度、剛性面が極端に低下するため現実的とは思えません。 仮にアッパーデッキを製作したりして強度上の問題をクリアーできたとしても、はたして軽自動車のエンジンにそこまでお金と手間をかけて改造することに何の意味があるのかを考えればバカバカしいことで、ちょっと現実的には考えにくいことです。

ですので常識的な範囲で考えれば、「R06Aは現実的にはボアアップは不可能」と考えるべきだと思います。

仮に純正のスリーブのまま加工をおこなったとしても0.25mm~0.5mm程度のオーバーサイズが限度でしょう。

※しかし、純正状態ではまだボア拡大による排気量アップの余地は残されている?

↑まず注目していただきたいのはシリンダー間の「壁の厚み」です。 けっこう余裕があるように思えませんか?

これはもしかしたらスズキが今後、将来的に軽自動車の排気量規格がアップされることを想定して、ボア径をある程度拡大できるように余裕を残して設計した可能性があります。 仮に、ボアをあと4mm~6mmほど拡大すれば仮にストロークはそのままでも排気量を750cc~800cc弱まで拡大できるので、それを見越してあえてボアピッチを広くとって余裕を残している可能性はあります。

また、シリンダー壁下部には穴が開いておりますが、これはマルチシリンダーのスポーツバイクエンジンなどでは今や常識となっている「バックプレッシャー抜き」用の穴で、ようするに各シリンダーのピストン下降時の圧力やブローバイガスの圧力を他のシリンダーに逃して、クランクケース内圧による抵抗によるパワーロスを少しでも減らすための穴です。 このあたりはさすがオートバイエンジンを作っているスズキらしいノウハウと言えますね。

3)レッドゾーンおよびレブリミットはどのくらいになるか?

今までの例からMTとATでレッドゾーンを変えてくる可能性もないわけではありませんが、R06Aはロングストロークであること、コンロッド大端部の剛性の低さ、クランクシャフトやメインベアリングまわりの剛性の低さを考慮するとおそらく7000rpm~7500rpmあたりが実用上の限界でレッドゾーンになるかと思います。 旧規格K6Aエンジンのように8500rpmレッドゾーン、その気になれば10000rpmもいけるなんてのはとうてい無理でしょう。

ECUのレブリミッターもおそらくは7800rpm~8000rpmあたりに設定されてくるのではないでしょうか。 いずれにしてもR06Aは実用回転域重視のエンジンで高回転はかなり苦手なエンジンでしょうから仕方ないことと思います。

R06AエンジンとK6Aエンジンのメーカー発表での構造上の比較

↑メーカー公表でのR06AとK6Aの主な相違点です。

基本的にはR06Aは低燃費、軽量コンパクトに主眼をおいたエンジンなので、やはりチューニングベースとしてのポテンシャルはF6AやK6Aと較べたらかなり劣ってしまうのは仕方ありません。

まず、クランクシャフトのジャーナル径ですが、ちょうどK6Aのクランクピン径がR06Aのメインジャーナル径と同径となっていますので、ほんとR06AのクランクシャフトはK6Aと比較してかなり細くなったと言えます。

↑<参考>クランクシャフトのオーバーラップ寸法。

細軸化によって、以前にも書きましたが、クランクシャフトの剛性にとって非常に重要な「オーバーラップ寸法」がK6Aが11.3mmもあるのに対し、R06Aはたった0.9mmしかなくなっています。 クランクシャフトの製造方法はR06AもK6A(ターボ)ともに鍛造(K6AのNAは鋳造)ですので、素材強度が同じとすると、これではクランクシャフトの剛性は単純に考えただけでもK6Aターボの半分程度しかないことになり、おそろしく弱くなっています。

クランクシャフトを軸方向から見たときにメインジャーナルとクランクピンの断面積が重なるほどクランクシャフトの剛性は高くできますので、細軸&ロングストロークでオーバーラップがほとんどないのR06Aのクランクシャフトはかなり強度、剛性の点で不利と言えます。 これはかなりチューンナップするのに障害となる要素です。

これに加えて、前述したようにシリンダーブロックのクランクのメインベアリングキャップ部の剛性の低さも加わりますので、R06Aはとてもハイパワー&ハイトルク&高回転チューニングにはとうてい耐えられそうにありません。

パワーアップ、トルクアップ、高回転化するとクランクシャフトのねじれ、曲がりなどが問題となり、それが元でメタルの焼きつきや異常な振動、クランク前端についているオイルポンプもトラブルを起こす可能性があります。

やはりR06Aは「弱いエンジン」と言わざるを得ません。 あと、「クランク軸のオフセットの有無」という違いも書いてありますが、これは主にフリクションロス低減のためでエンジン性能には直接の関係はありません。

レーシングエンジンではクランクシャフトおよびピストンピンのオフセットなどないのが一般的ですので。

逆にK6Aではクランクオフセットがないかわりに「大きな連桿比のコンロッド」というもっとエンジンの基本的な設計技術でのフリクション低減を図っていますので、どちらかと言えばK6Aのほうが正攻法なのです。

ただ、別の点では進化していて「羨ましい」と思える部分もあります。 まず、バルブリフターが「シムレス」ってのはいいですね。 K6Aは重いアウターシムだったので、せめてインナーシム式だったらなぁ、と思っていたのですが、シムレスなら動弁系の軽量化ができますし、余計な部品がひとつ減ることから動弁系の高剛性化にもなります。

ただ、R06Aがシムレス式にしてる主な理由は高回転での追従性向上のためではなく、あくまでもバルブスプリングをできるだけ弱くしてフリクションロスを減らすためだけなので、目的としてはパワーや高回転化のためではなく、あくまでも「省燃費」のためなのでチューニング目的が根本的に異なりますが。

このような点から考えても、やはりR06Aは高回転化およびハイパワーチューニングにはかなり厳しいエンジンと言わざるを得ないでしょう。 現状では100馬力を超えるようなチューニングはかなりリスクが高いと思われます。

●R06Aは日産SRエンジンと多くの共通点を持っている?

以上、いろいろR06Aの構造を考察してきましたが、ここまで見て私が気づいたことは、アルミ製ディープスカート型シリンダーブロックに鋳鉄製ドライライナーを鋳込む方式や、鋳鉄製独立式クランクメインベアリングキャップ、シリンダーボア間にある冷却水が通るためのスリットがあるなど、多くの点において日産のSR20エンジンと酷似している面が見受けられることです。 こうして見るともしかしてスズキはSRエンジンをお手本にした部分も多々あるのかもしれません。 ただ、私個人は日産のSR型というエンジンはあまりいい設計のエンジンとは思ってないのであまり参考にしてほしくはなかったというのが本音ですが。 シリンダーブロックなどはまだK6Aのほうが構造的に優位性があった気がしますが、これもコストなど様々な理由からこのように変えられたのかと思われます。

とりあえず、現状で推測できるのはこんなところでしょうか。 実際に新型ジムニーに積まれるときにどういった改良、変更をしてくるのかはわかりませんが、ひとつ確実に言えることはR06Aのチューニングポテンシャルは今までのF6AやK6Aに比べて格段に低いことは間違いなく、大幅なパワーアップチューンは各部の強度上、かなり難しいと思われますので、だからこそノーマル状態で最大限のポテンシャルアップを期待したいところです。

<おまけ>「R06Aがノーマルで80PS!?、15kg-m!?の謎」

↑これはマフラーメーカーのフジツボのサイトにあったMRワゴンでのR06Aの馬力とトルクのデータですが、ノーマルでなんと「80.8PS/15.8kg-m」!とまったくありえない数値が載っています。

とは言ってもなんのことはない、これはCVT車をそのままシャシダイに載せて測ったためで、CVTではギアを固定できないためにこのようにメチャクチャな数字を出してしまうのです。 仮にパドルシフト仕様でギアを固定したとしても、エンジン回転が低すぎたり高すぎたりするとECUが勝手にフェイルセーフで変速してしまうので、CVTではまともにシャシダイ計測ができないのです。 さらにエンジン馬力算出の際に計測される「ロス馬力」もCVTでは一定してなく正確な計測が不可能なため、このあたりもまったく信用できないのです。 やはりこのへんの本当の実力も「MT仕様待ち」ですね。

それと、これも疑問な点としてこのデータではブースト圧が0.4kg/cm^2と書かれているのですが、そんなに低いわけないと思います。 K6Aの「Mターボ」エンジンでさえ0.5k~0.6kはありましたから、少なくともそれ以上の過給圧はないとおかしいですし。 私の予想では純正でだいたい0.7kg/cm^2あたりかと考えています。

このように、いろんな意味で現在のCVTのみのラインナップではR06A、それもターボモデルの真の実力は不明な点、疑問な点が多いので、やはりジムニーが出るまでは「R06Aの本当の真価、実力」はわからないでしょう。