「レスポンスリング」なる商品についての私なりの考察および意見

「シエクル」や「スージースポーツ」などから「レスポンスリング」なるものが売り出されています。 今回はこのパーツについていかに疑わしいものであるかを検証していきたいと思います。

↑「レスポンスリング」のまったく理解不能な宣伝文句。

「燃焼効率アップ?」→吸気抵抗が増えるのにどうして燃焼効率が上がるのか説明してもらいたいです。

「アクセル反応アップ?」→そりゃ実質的にスロットルボディの径を小さくしたのと同じことですから、アクセルの「開けはじめ」だけは「感覚的に」そう感じるだけです。

「低中速トルク増大?」→吸気抵抗が増えて吸入空気量が減り、燃焼する混合気が減少してしまう、つまり燃焼圧力が減少してしまうのにトルクが上がるなんてこんなことは科学的に絶対にありえません。

また、ハイエース系のショップからも「エアリストリクター」なんて恥もなく思いっきりストレートな名称で同じものが売られているようです。

↑その名も「エアリストリクター」。そのまんまですね。

「販売メーカーの弁」によるこのパーツの原理と説明

↑要はサクションパイプ入り口をテーパーで径を絞ってベンチュリー効果(ベルヌーイの定理による

流速の向上)を発生させて、流速を速めて慣性過給効果を高め、低中速トルクおよびレスポンスを上げるというのが「目論見」のようです。 が、騙されてはいけません。こんなことで「低速トルクなんて絶対に上がりません」。 上記スージースポーツのページにも書いてあるように「トルク感」が上がるだけで、実際にはただの「体感的な人間の錯覚、プラシーボ効果」でしかないのです。

こんなパーツは私に言わせればじつにバカバカしい。百歩譲ってNAエンジンなら若干の「精神的効果」はあるかもしれないが、私が以前から主張しているように「ターボエンジンは徹底的にサクション抵抗を減らすべき」なのに、こんなリングをつけたら逆にサクション抵抗が増えてターボのブーストの立ち上がりが遅くなることでレスポンスが悪化、かえって低速トルクのダウンになってしまいます。

こんなものつけるくらいなら、エアクリーナーボックス内のサクションパイプの入り口にエアファンネルをつけた方がずっと効果的というものです。こんなのただのエアリストリクター(吸入抵抗器)にしかなりません。エアリストリクターはレースの世界では単に「エンジンの性能を落とすためのパーツ」なのですから、こんなものチューニングパーツにはなり得ません。 それに、仮にそこの一部分だけ吸気の流速が上がったところで全体の「吸気流量」が減ってしまってはまったく意味がありません。

当然、こんなパーツは吸気抵抗増加になりますので最高出力はパワーダウンしますしターボのブースト圧も下がるばかりか、吸入抵抗の増大によってターボのコンプレッサーホイールに無理な負担がかかるため、タービンの耐久性が落ちてターボチャージャーの寿命の低下に繋がり、最悪はタービンブローに繋がる危険なものですので良いことなんてひとつもありません。こんなパーツはとくにターボエンジンにとって「百害あって一利なし」の最低なパーツです! NAエンジンならまだパワーダウン程度でさほど実害はありませんが、ターボエンジンには絶対につけるべきではありません。 こんな商品は「チューンナップパーツ」ではなく「デチューンパーツ」です。 わざわざ高い金出してエンジンの性能落とすなんて実に馬鹿な商品です。賢明な皆さんはこんなアホなパーツは絶対につけるべきではありません。 メーカーやショップ、雑誌の無知でアホな宣伝広告に「騙され、惑わされ、踊らされないよう」に注意してください!

私は以前にもスロットルスペーサーでのベンチュリー効果を提唱しました

↑レスポンスリングに比べたら、私がかなり以前に提案したことのある「スロットルスペーサー」部に同様の絞りを入れてベンチュリー効果を狙ったパーツをつけたほうが何倍も低回転時の慣性過給効果がある上、ターボにも負担はかかりませんよ。 ただし、これもトレードオフとして最高出力が犠牲になるデメリットがあるのは同じことですけどね。 要するにレスポンスリングにしたってこれにしたってやっていることは「スロットルボディの内径をわざわざ小さくするのと同じこと」なのですから。

いわゆる「ビッグスロットル」とは真逆のこと、言ってみれば「スモールスロットル」をやっているわけです。ですから、間違っても「ビッグスロットルとの併用」なんてバカな真似は絶対にやめましょう。矛盾どころか、いったい何がしたいのか訳わかりませんから。

しかも、現代のエンジンでこんな「原始的な方法」はお笑いでしかない

皆様も知っての通り、現在の最新鋭のエンジンは、電子制御スロットルやVVTやVTECをはじめとする可変バルブタイミング&リフト機構、さらにインテークマニホールドの長さを切り替える機構など、さまざまな低速域、低回転からの実用域から高回転のパワー領域までコンピューターによってコントロールするデバイスが満載されています。 つまり、本当に低回転から高回転までのトルクアップ、レスポンスアップ、パワーアップをしたければそれらの制御を司るECUセッティングでおこなうべきことなのです。そう考えればこんなレスポンスリングなんてものは「まだ頭の中がキャブレター時代のままの原始人のやること」です。

さらに問題は「エアフロメーターの計測に誤差が生じる」

このレスポンスリングはエアクリーナーボックスとサクションホースの間につけるわけですが、エアーフローメーターで吸気量計測をしているエンジンの場合、流速が上がるとその後方にあるエアーフローメーターが実際の吸気量よりも多く空気が送り込まれたと「誤計測」をしてしまい空燃比(A/F比)が狂ってしまうという不具合が生じてしまうのです。 K6Aエンジンのような圧力センサー式(Dジェトロ式)の場合は問題ありませんが、日産などのエアフロメーター式(Lジェトロ式)の場合は無視できない問題となりますので、ECUのリセッティングの必要性が出てきます。

↑ホットワイヤー式エアフロメーター。 一般的なエアフロメーターはその口径(内径)を通過する空気量を計測していますので、下手に流速を上げたりすると「より多くの空気が通過した」と勘違いして誤計測をしてしまうのです。ですから「レスポンスリングをつけてそのまま」では空燃比が狂ってしまいます。

もちろん、フィードバック領域ではO2センサーが補正してくれますが、根本的な解決にはなりません。

しかもこのリングを付けると「燃費が悪化する」可能性が高い

販売メーカーでは「燃費が向上する」などと書いていますが、とんでもない、むしろ逆に燃費が悪化する可能性のほうが高いのです。なぜならば、レスポンスリング装着により吸気口面積を絞ることで吸気流速が速まるということは、それだけ「吸入抵抗」が増えるわけで、ピストンが吸入行程で吸い込む際の抵抗が増す、いわゆる「ポンピングロス」が増えてしまうわけです。 当然これは燃費の悪化につながっていきます。

↑これは販売メーカーのシエクル自らおこなった吸引負圧テスト。 見ての通り、レスポンスリングを装着したほうが吸入負圧(-mmHg)が大きくなっている、即ち実際のエンジンではポンピングロスが大きくなってしまうことを販売メーカー自らが認めているわけで、燃費の悪化は必然なのです。

↑これはエンジンの「機械損失」いわゆるメカニカルロスのエンジン回転数に応じた割合を示したグラフですが、見てのようにポンピングロスは非常に大きな割合を占めます。 つまり、このレスポンスリングをつけるとこのポンピングロスがさらに増加し、エンジンのパワーロスが増える=同じだけのパワーを出すためには余計に燃料(ガソリン)を燃やさなければならない=燃費が悪化するというわけなのです。

さらに前述したエアフロメーターの誤計測も燃料を濃くする方向で働きますから、これも燃費が悪化する方向に働いてしまいます。 つまり、このレスポンスリングをつけることで燃費が向上するなんてことは理論上あり得ず、むしろ燃費は悪化するのです。こんなことはエンジンの基本中の基本知識で、少し考えればエンジン構造の基礎知識がある人ならすぐに解ることですよ。

↑それらを考えたら、こんなレスポンスリングなどという無駄な吸気抵抗にしかならないようなやり方は、そうですね、大型バイクで言うところの「逆車フルパワー」車を日本国内用にさまざまな抵抗をつけてパワーダウンさせてるのと同じことです。キャブレターの時代じゃないんですから、こんな物理的な抵抗物をつけて「いかにも低速トルクが上がったように見せかけ、乗り易くなったように錯覚させる」ような「原始的」なやり方は現代のエンジンには合っているとはとうてい言い難いです。

まったくもって信頼性が皆無、かつ稚拙で怪しい「加速テスト」

↑これも販売メーカーのシエクル自らのレスポンスリングの有無による0-60km/hまでのハーフアクセル以下(アクセル開度28%程度)での加速テストデータですが、ここでおかしいのは、使用している車がレクサスのCT200h、つまり「ハイブリッド車」なのです。 なぜ純粋なガソリンエンジン車を使わないのでしょう?

ハイブリッド車では仮にレスポンスリング装着でエンジンパワーやトルクが落ちてもモーターがアシストしてしまいますからとても「公正な比較とは言えません」。 こんな子供騙しのアホなデータをよくも堂々と載せられるものだと呆れかえってものが言えませんよ。 どうせやるのなら純粋なガソリンエンジン車、それも電制スロットルではなく機械式のワイヤーリンケージスロットルの車で比較しないと公正な比較なんてできません。 賢明な皆さんはこんな信憑性の全くないデータになんか騙されてはいけません。

参考までにHKSがおこなった「リストリクター径の違いによるパワーとトルク」のデータ

↑これはHKSのスーパーチャージャーに5種類の内径の異なるエアリストリクターをつけてエンジンベンチテストしたグラフ。見てのようにリストリクターの径を絞ると最高出力や最大ブーストは径に比例して大きくダウンしますが、低回転のトルクはほとんど変化しないどころか、リストリクターの口径とはまったく比例関係になくランダムなことがわかります。 このことは、エアリストリクター、つまり「レスポンスリングなんかつけてもただパワーダウンするだけで低速トルクなんかほとんどアップしない」ことの証明でもあるのです。

どうですか?ここまでいろいろな考察や理論、また、販売側のどう考えても信用できない怪しいデータなどを交えて説明してきましたが、この「レスポンスリング」がいかに無意味で効果のない「オカルトパーツ」であるかがご理解いただけたでしょうか。

やはりターボエンジンでは「サクション抵抗を減らす」ことこそが重要

まぁ、百歩譲って自然吸気エンジンなら、このレスポンスリングなるものをつけての「弊害、実害」は実質的なパワーダウンしかないのでエンジンにさほど悪影響はありませんが、ことターボエンジンとなるとサクション部分に無駄な絞りを入れて吸入抵抗を増やすことはターボのコンプレッサーホイールに無用な負担をかけ続け、長い目で見ればターボチャージャーの寿命の低下および、最悪は破損につながるリスクが伴います。ましてや、こんなリングをつけた上でブーストアップなんてしたら、ターボチャージャーに負担がかかりすぎて寿命が極端に縮まってしまいます。 ターボの場合は、私が以前から訴えているように「サクション抵抗を減らす努力をするべき」なのです。 そのほうがよりタービンホイールが低回転から素早く軽く回ることができるので、よりレスポンスアップ、トルクアップに効果があることは「私自身も身をもって体験しています」。

対して、このレスポンスリングはそれとは「真逆」のことをやっているわけですので、ターボエンジンにとってはまさに「百害あって一利なし」な最低のパーツというわけなのです。

↑私のJA22ジムニーのエアクリーナーボックス内に設置してあるカールファンネル。 レスポンスリング

なんて抵抗物より、このような積極的にターボにエアを取り込むエアファンネルを付けたほうが低速トルク

からレスポンス、高回転のパワーまで全域で「絶大な効果」を発揮します。

とにかく皆様もよく勉強して騙されないようにしてください

この手の詐欺まがいなパーツを売る業者は、ベンチュリー効果、流速アップ、ベルヌーイの定理など、いかにもそれっぽい学術的な言葉を用いて「商品の正当性」を主張しますが、理屈や理論はともかく、実際の商品にはそれらがまったく活かされていないケースがほとんどです。 たしかに、これらの物理現象を真面目に研究して開発されたパーツならそれなりの効果が期待できるものも作れないわけではありません。

ですが、それらを真面目に作ろうとしたら自動車メーカーがおこなうようなレベルのかなり大掛かりなお金をかけた研究と大改造が必要で、たかが1チューニングショップのレベルでできるような「ただインテークパイプにポン付けするだけ」なんてお手軽にできるようなものでは実現不可能というものです。 この程度のことは工業高校や理系の大学を出ているような頭脳を持っている方ならすぐに理解していただける次元の話だと思いますので、ズブの素人や頭のイカれたDQNならいざ知らず、まさか自動車工学や内燃機工学などの専門知識を持っている方の中にこんなオカルトパーツに騙される人がいるとは私は思いたくありませんが…

まとめ

ここまでの話をまとめますと、このレスポンスリングを装着すると、最高出力の低下、最大トルクの低下、燃費の悪化、ターボの寿命の低下…と、エンジンにとって何ひとつ良いことなんてないのです。

皆様もネットの宣伝や雑誌などのメディアの広告の文面に惑わされることなく、きちんとエンジンの基本を勉強して正しい知識を持ち、正しい判断をして騙されないようにしてください。

<おまけ> JA11ジムニー(F6Aエンジン)用の「インマニ延長アダプター」

↑これはJA11ジムニー用のインテークマニホールドを延長するためのアダプターで、インマニの長さを稼ぐことで、低回転域での脈動効果および慣性過給効果を高めて低速トルクを増強しようというパーツです。

これは今回取り上げたレスポンスリングなどとは違い、きちんと理論に基づいたやりかたで、実際、本格的なレーシングエンジンでも、そのサーキットに合わせてインマニの長さや内径を違うものに変えることはよくあることです。 たとえば、高速サーキットでは太く短いインマニ、テクニカルなサーキットでは細く長いインマニ、と使い分けるのです。 また、エアーファンネルもコースにより長いもの、短いものを使い分けます。

↑様々な長さのエアファンネル。このファンネル長さによってエンジンのトルク特性が変えられます。

具体的には長いほど低回転トルク型でテクニカルコース向き、短いほど高回転パワー型で高速サーキット向きとなります。 この理論も前述したインマニと基本的に同じ考えです。

さらに、このファンネル長さを走行中に可変させる可変エアファンネル(VAF)なども90年代のホンダF1などのレーシングマシンからよく見られるようになりました。

↑1991~92年頃のホンダF1のV12エンジンに採用された吸気管長を走行中に自在に変えることができる可変エアファンネルシステム(VAF:Variable Air Funnel System)。これにより低回転域では吸気管長を長く、高回転域では吸気管長を短く変化させて慣性過給効果および吸気脈動効果を常に最適化することで広い回転域でフラットなトルクバンドを得ることができ、多気筒高回転型エンジンの弱点であるピーキーさをカバーすることが可能になり、とくにテクニカルサーキットで絶大な効果を発揮したのです。

このような科学的理論に裏付けされた正しい吸気系チューニングならば私も納得はできますが、やはり今回取り上げた「レスポンスリング」は理論的に破綻しており、どう考えても「オカルトパーツ」の類としか認識できませんね。まったくもってアホなパーツです。 売る方もアホですが、買う方はもっとアホです。

ターボエンジンのサクション部分には「可能な限り余計な抵抗は排除する」ことが肝要

↑とにかく、ターボエンジンのサクションパイプ部分は「ターボが楽に回るよう徹底的に低抵抗になるよう工夫すること」こそが最大のチューニングポイントなのです。 わざわざ径を絞って抵抗をつけるなんてまったく理屈にあわないバカな発想です。

※補足

今回の記事も特定のメーカー、ショップ、商品についてかなり攻撃的な書き方をしました。 よって、業者からクレームがくる可能性があります。 しかし、私は「エンジンチューニングは科学であり物理である」をモットーとして考えておりますので、皆様に正しい「科学的根拠に基づいた説明」をしているだけで、決して「根拠のない誹謗中傷」をしているわけではありませんし、ネガティブキャンペーンをやっているつもりもありません。あくまで「理論上おかしい、怪しい点が多すぎて信用できないものである」ということをできるだけわかりやすく解説しているだけのことです。 もし反論があるなら「私を納得させられるだけの科学的根拠や説得力のある理論および信頼性のあるデータ」を用意してください。「自分はこう感じたから効果はある」などの抽象的な何の説得力もない個人的な感想など要りません。 私はどう考えても間違っている「理屈に合わないチューニングパーツ」については今後も徹底的に糾弾していくつもりです。