スロットルスペーサーの実験と考察

現行JB23ジムニー用にスロットルスペーサーなるものが市販されています。

簡単に言えば、スロットルボディとサージタンクの間に挟む薄い板状のスペーサーです。

メーカーの弁によれば、低速トルクの向上やレスポンスの向上などを謳っていますが、個人的にはその説明だとどうしても理屈の面で理解できない部分があります。

スロットルボディーとサージタンクの間にスペーサーを噛ました場合、スロットルからシリンダーまでの距離が延長され、かえってレスポンスは悪化するのが通常です。

たとえば、独立スロットルのエンジンはシリンダーからスロットルバルブまでの距離、容積を最小にすることでスロットルの開閉に伴う動圧変化を迅速にシリンダーに伝えることでレスポンスの向上を図っているわけです。 このスロットルスペーサーはそれとはまったく逆に距離が延びているわけで、それだけスロットルの開閉に伴う動圧の変化、伝達に時間がかかることになりますので、レスポンスの悪化につながることになるからです。

また、スロットルスペーサー装着により僅かとはいえサージタンク容量が増えてしまう点についても考慮する必要があります。

一般に、サージタンクは容量が小さいほど低速向き、大きくなるほど高速向きとなるので、実用域を重視する市販車では排気量とほぼ同じか大きくても2倍未満、高回転パワーをとくに重視するレーシングエンジンでは排気量の2倍~3倍程度を基準として設計されることが多いですが、とくに街乗り車での過度のサージタンク容量増加は低アクセル開度時のハンチング(いわゆるギクシャク感)の増大につながりドライバビリティの悪化になりますし、さらに低回転時の慣性過給効果が薄れることで低速トルクの減少(正確にはトルクの山がやや高回転側に移行する)に繋がります。

もちろん前述した理由によりエアボリュームの増加はアクセルレスポンスの悪化にもなります。

とくにノーマルタービンのように小さいタービンで下手にサージタンク容量を増すとそれだけスロットルを開けてから内部のエアの充填に時間がかかりますのでレスポンスは悪化します。

以上のように私の考えではこのスロットルスペーサーについては、少なくとも「低速トルクの向上」や「レスポンスの向上」という面に限って言えば否定的な理屈しか考えつかないのです。

しかしなぜか世間ではこれをつけたことによってトルクが上がったとか、レスポンスが向上したとかいう人がいます。 それならば理屈は置いといて、簡単なものですしとりあえず私のJA22でワンオフで造ってみて試してみようじゃないかというのが今回の企画です。

製作したスペーサー

↑市販でJB23用として売られているスペーサーは6mm~12mm程度が多いようですが、今回私は10mm(正確には9.8mm)で製作してみました。 材質は強度部材ではありませんので通常の耐蝕アルミ、A5052Pです。

※なお、テスト後、厚みは最終的には8mmまで落としました。 スロットルワイヤーの調整がギリギリだったことと、水ホースが若干引っ張られるので、多少余裕を持たせるためです。

取り付け

取り付けはスロットルボディとサージタンクの間に挟むだけです。

当然ながらスペーサーの両側にガスケットを挟む必要がありますので、純正部品のガスケットを新たに購入するか、市販の汎用ガスケットシートで純正と同形状に切り出します。

当然、取付けボルトもスペーサーの厚みぶん長いもの(M6×60)を4本購入します。

↑取付け後、スロットルケーブルのアジャスト部を調整して、アクセルペダルをいっぱいまで踏んだときにきちんと全開になるようにしておきます。

装着後のインプレッション

いつも通り、街乗りおよび高速の全開にておこないました。

それで変化ですが、かなり微妙ではありますがたしかにありました。

具体的には主には低回転域ですが、回転よりもスロットル開度に影響されるようです。

全開に近い状態になると何も変わらないのですが、発進時などのアクセルの踏みはじめや、アクセル開度の低いとき、パーシャル状態からの加速時にトルクがやや上がったような感じになります。

たとえばアクセル開度が1/4程度で高速道路を一定の速度を維持して巡航しているとします。

そして若干の上り坂にさしかかり、そのままでは速度が落ちるのを防ぐために少しアクセルを踏み足しますが、こういったときのトルクの出方が今までよりも力強くなったという感じです。

このトルクの立ち上がり特性が向上することが、体感的にエンジンレスポンスが上がったように感じさせるのでしょう。

これらについて私もいろいろ考察したのですが、以下のような理屈ではないかと考えました。

ノーマル状態

↑スロットル開度が低いとき、スロットルバルブによって狭められた隙間を通過した気流はスロットルバルブ裏に巻き込み、その後すぐに広い空間(サージタンク)に入るため、気流が乱れたままの状態になりやすい。

スロットルスペーサーつき

↑スロットルバルブの隙間を通過するところまではノーマルと同様だが、いきなり広い空間に出るのではなく、スペーサー延長部による「助走距離」があることで、ある程度整流効果がおき、これによって吸気の流れに慣性がつき、これがわずかながら慣性過給効果を生じさせるのではないかと考えられる。

そのため、アクセル開度の低い状態では若干のトルクの向上に繋がるのではないか?

スロットル全開時

↑スロットル開度が大きい状態(およそ2/3以上程度)から全開においては、スロットルバルブ裏側の乱流がおきにくいため、スロットルスペーサーがあってもなくても変わらない(ただ単に吸気管の長さがごく僅か長くなっただけでしかない)ためとくにメリットもデメリットもなく、高回転域の障害にはならず、最高出力への悪影響は出ないといえる。

以上が私の見解です。 ただ、これが本当に正しいのかどうかまだまだ疑問は残ります。

それと、この理屈はK6Aエンジン独特のスロットルボディ以降のサージタンク形状が大きく影響していることになりますので、同じようなスペーサーが他のエンジンでも有効かというとそうではなくなります。 このK6Aのようにスロットルボディの口径からいきなり絶壁で広い空間になっているようなお粗末な形状ではなく、スロットルバルブからサージタンクにかけてなだらかに流線が形成されるようによく考えられて造られたサージタンク形状のエンジンではこのような変化は得られないでしょう。

実際、K6Aのサージタンクはこのスロットルボディとの接合部だけでなく、本体形状についても、容量は別としても形状は単なる箱型の寸胴で、効率的に吸気を均等に分配するにはあまりにも単純であり、詰めて設計された形ではないように見えます。

いずれにしても、もしこの考えが正しいとすれば、このスペーサーはスロットル開度が小さい領域ほど有効で、全開時をはじめ、スロットル開度が大きい状態ではメリットもデメリットもないと言えます。 (厳密に言えば吸気管長が長くなったことによるレスポンスの低下ということが言えますが僅か数mmであり、この程度は実質上は無視できる量でしかありませんので)

パワーメーターの表示

今回はこのくらいになりました。 前回のインタークーラー放熱塗装のときよりも数値は低いですが、今回は回転数を5速7000rpmちょっとまでしか回していなかったことと、何よりも真夏の気温の高い状態(30度近かった)であったことが影響しています。

逆に言えば、その条件でこれだけの数字が出せれば立派と考えるべきで、スペーサーによる最高出力への悪影響はないと言っていいと思います。 実際、体感的にもそう感じました。

おまけ

↑スペーサー内径部を緩やかなRにして若干径を絞ることでベンチュリー効果を出すことで

流速を上げ、慣性過給効果を高めることでより低速トルクの増強ができる可能性があります。

ただし、当然のことながらそのぶん内径の断面積が減りますので最高出力は多少犠牲になる

ことが考えられます。

この場合、スロットルシャフト部の面積と内径を絞った部分の面積を同じにすれば事実上は

内径の最狭部の断面積を同じにできますので、そうすれば最高出力を犠牲にせずに済むかも

しれません。 これはあくまで案ですが、低速トルクが少しでも欲しいと考える人は実際に

製作し試してみると良いかもしれません。 もちろん結果は保証できませんのであしからず。

なお、アメ車用の同様の製品では内径部に螺旋を切ることで「サイクロン」と同様の効果を

狙ったものがあるようですが、正直これは「?」と思います。

ただ、結果オーライですので、最終的には付けた人が満足すればそれで良いとは思いますが。

●まとめ

今回の実験は、「否定にはじまり肯定に終わる」というなんとも歯痒い結果となったわけです

が、自分としてはいい勉強にもなったと感じていますので得るものはあったと思います。

ただ、実際の変化はトルクそのもののアップというより低アクセル開度でのトルクの立ち上がり

特性が若干向上した程度であり、現実のレスポンス向上に関してはとくに感じませんでした。

私は基本的に理屈から入るほうなので、辻褄が合わなかったり理屈が通らないモノは嫌いなの

ですが、今回のようにまず試してみてからあれこれ考察するというのもアリかなとは思いました。

また、こうしたことがDIY感覚で気軽にできるジムニーという車も素晴らしい素材だと感じます。

なお、今回のスロットルスペーサーによる変化は私の車の場合はそれほど大きくありませんでしたが、それは私の車の吸気系にはインテークチャンバーやビッグスロットル、インタークーラー等、多くの非純正品がついており、それによる効果もすでにかなりあったため、それらの相乗効果として現れたことから、単一の部品としての効果よりは体感的には薄れてしまったものと思います。

ですので、もしかするとまったくのノーマルのK6Aエンジンにこのスペーサーをつけた場合はもっとハッキリと効果が感じられる可能性は残されています。

いずれにしてもこのスペーサーは、街乗りで多用する低アクセル開度時のトルクを向上させながらも高回転時にも障害にならないという意味では面白いパーツであると言えます。

当然、普段のアクセルを踏み込む量が少なくなれば燃費にも良い影響が出てくるものと思います。

逆に言うと、たとえば全開状態を多用する競技などのようにほとんどがアクセルの全開か全閉しかないような使用条件ではほとんど意味のないものと言えますし、普段の運転の癖ですぐにアクセルを全開にしてしまうような人にも無意味でしょう。

パーシャル領域をうまく使うような場合にこそ本領を発揮できるパーツであると言えますので。

最後に、このスロットルスペーサーとインマニに挟むスペーサーを混同して考えている方がいますが、この2つの原理は明確に異なります。

インマニスペーサー、即ちインテークマニホールドの延長は慣性過給のタイミングが低速寄りになりますので、実質的な低中速域のトルクの向上につながります。

(ただし、それと引き換えに高回転域ではトルクダウンしますので最高出力は若干低下します)

また、スロットル直前につけるインテークチャンバーの場合はスロットルのON/OFFに伴うトルクの立ち上がり特性の向上になりますので、今回のスロットルスペーサーとやや効果が重複する部分もあり、組み合わせることで私の車と同様、相乗効果が望める可能性もあります。