吸気温度は低いほどパワーが出るというのは無条件に正解なのか?

「吸気温度は低いほど酸素密度が上がるのでパワーが出る」。 これは一般的によく言われることで、その理屈は今さら説明するまでもないことと思います。 空気は暖まると膨張し密度が下がり、冷えると収縮し密度が上がりますので、同じ体積なら温度が低いほどその内部に含まれる「酸素分子数」が多くなりますので、同じ空燃比(A/F比)であれば温度が低いほど多くの燃料(ガソリン)を燃やすことができるため、燃焼圧力が高くなる=発生するトルクが上がる=馬力(出力)が上がるという単純な理屈になります。

これ自体は間違っていません。

↑私のJA22ジムニーのARC製スーパーインタークーラー(写真は2009年、放熱塗装した直後のもの)。

私の車でも1.3kg/cm^2のフルブースト時にはターボコンプレッサー出口の空気の温度は実測で150度ほどになります。 空気は過給(断熱圧縮)すると温度が上がるのは物理法則ですので、エアクリーナーから吸い込んだ段階での気温が高かろうが低かろうが、1kg/cm^2を超えるブースト圧の状態では加圧されてターボから出た直後の空気温度はどんなエンジンもだいたい最低このくらいにはなります。 それをこの小さなサイズのインタークーラーで、なおかつエンジン上置きにもかかわらず、全開全負荷、フルブーストで最高出力を出している状況の最高速アタック時でもこの吸気温を1/3以下の50度未満の温度にまで大きく引き下げるのですからARCのインタークーラーの冷却能力はたいしたものです。

体積効率と充填効率

ここでやや突っ込んだ書き方をしますと、シリンダーが吸い込んだ空気の量にも「体積効率」と「充填効率」という違いがあります。 体積効率とは、単純に1シリンダーあたりが吸い込む空気(混合気)の体積で、単純に1気筒300ccのシリンダーに300ccの空気が入れば体積効率は100%となります。 しかし、その同じ300ccの空気でも吸い込む空気温度が70度の場合と30度の場合では含まれる酸素の量はまるで違ってきます。当然ながら低い温度の空気のほうがより酸素の量が多くなるわけで、それを一定の条件にして示す尺度となるのが充填効率となります。

実際のエンジンではこの充填効率をいかに高めるかのほうが大切で、NA(自然吸気)であれ、ターボであれ、吸気温度とともに慣性過給効果や脈動効果を利用し、いかに多くの空気をシリンダーに取り入れ、充填効率を上げるかというのがエンジンチューニングの基本です。 多くの空気(酸素)を吸い込ませさえすればそれに見合った量のガソリンを吹いてやることは造作もないことですので。

であれば、吸気温度は低ければ低いほどいいのか?

結論から言うと「理論的にはYES、しかし現実にはNO」です。

吸気温度を語るとき、多くのみなさんはなぜか吸い込む「空気だけ」にしか着目しませんが、実際にエンジンが燃焼させるのは空気(酸素)とガソリンを混ぜ合わせた「混合気」であることを忘れてはなりません。

つまり、良い燃焼を得るためには混合気の霧化および気化状態が良好でなければならないのです。 たとえば、同じ14.7:1という理論空燃比でもガソリンの粒子が粗く均一によく混ざってない混合気と、ガソリンの粒子が細かく均一によく混ざっている混合気ではまったく燃焼状態が異なってくるわけで、当然ながら、より細かいガソリン粒子として霧化し、燃焼室内で素早く気化してくれたほうが着火性が良くミスファイア(失火)もなく、さらに点火してからの燃焼速度も速く短時間で急速燃焼し、より大きなトルクを取り出せるわけです。

さらにチューニングという観点からすると、気化しやすいということは吸気温度から潜熱(俗に言う気化熱)をより多く奪えるため、シリンダー内での混合気温度が下がることから、ノッキングも起きにくくなるわけです。 その意味でも「ガソリン粒子が細かく均一な混合気」が求められるわけです。

ちなみにこのように混合気を均一に混ぜ合わせた状態にして燃焼させることを「均質燃焼」と呼びます。

それに対してわざと混合気を均一に混合せず、空燃比の濃い部分と薄い部分を作り、濃い部分で着火させ、それを薄い部分に燃え広がさせる燃焼形態を「成層燃焼(または積層燃焼)」と呼びます。

これは90年代の第二世代の直噴エンジン、GDIやD-4でおこなわれた方式で、とにかく燃費向上のために極端に空燃比を薄くし、最高で40:1を超える超希薄燃焼をさせるために採用されましたが、実際にはあまりうまくいかず、皆さんもご存知にように、着火ミスや不完全燃焼が多く、黒煙(スス)を多く吐き出したり、エンストしたりと散々なモノになってしまいました。

↑三菱のGDIエンジン、4G93。 発売当初は「従来のエンジンより30%も燃費が良い」などの話題性で評判になり、その後トヨタもD-4などで追随しましたが、結局、超リーンバーンの成層燃焼がうまくいかず、黒煙の排出、エンスト多発、アイドリングの不安定、燃料ポンプ系統のトラブル多発、それでいて燃費もたいして良くないなど「まったく良いとこのないクソエンジン」となってしまいました。 GDIは三菱にとって黒歴史になっただけでなく、直噴エンジンすべてのイメージを一気に失墜させる「戦犯」となりました。 三菱にとっては忘れたい過去でしょう。 ですので現在の各メーカーの第三世代の直噴エンジンではこのような極端な超希薄燃焼はさせず、基本的には理論空燃比で制御するストイキ制御をし、リーンバーン領域でもせいぜい20:1程度までとしています。

話が少々脱線しましたが、要するに「良い燃焼のためには質の良い混合気を作らなければならない」わけです。

ここで問題になるのが吸気温度に対してのインジェクターの霧化能力の限界とのバランスです。 ガソリンは非常に気化しやすい揮発油ですが、それでもあまりに空気の温度が低いとなかなか気化してくれません。

ましてやチューンナップして高回転化すると気化する時間が短くなってより気化し辛くなります。 つまり「効率の良い気化を促進してやるには、ある程度の吸気温度が必要」になってくるわけです。 ここが「現実には吸気温度は低ければ低いほど良いというわけではない」と言う理由です。

結局、最後の最後に燃焼室内の吸気温度を下げるのは「ガソリンの気化熱」なのです。 たとえば、仮に吸気した空気温度が低くてもガソリンが効率良く気化してくれなければ吸気温度は下がりません。 逆に、吸気した空気温度が多少高くてもそれによってガソリンが効率良く気化してくれればその潜熱で一気に吸気温度を下げることが可能になります。 だからこそ「吸気温度は空気だけ見ていてもダメ」ということなのです。

ガソリンと空気が混ざったあと(予混合後)にどのくらいまで温度を下げられるかということが重要なのです。

この究極が「筒内噴射(直噴)」エンジンで、空気だけを圧縮したとこで一気にガソリンを噴射し、シリンダー内の混合気の温度を急激に下げることができるため、ノッキングが起きにくい直噴エンジンはターボでもNAなみの高圧縮比が実現できているというわけです。

ポート噴射エンジンで冷えすぎた空気を効率良く霧化させる決め手はタンデムツインインジェクター

昔、まだマルチホールインジェクターがなかった頃、NAであれターボであれ、吸気温度がある一定以下に冷えすぎるとかえってパワーダウンしてしまうという問題がありました。 この原因は前述したように、空気の温度が低すぎてガソリンが綺麗に細かい粒子に霧化してくれず、結果、気化効率が下がって空気とガソリンが均一に混ざってくれないことから「良い混合気」になってくれず、理想的な燃焼をしてくれなかったり、パワーダウンや最悪はミスファイアーを起こしたりしたためです。 そのため、レーシングエンジンでは、インジェクターを吸気ポート直前に1箇所、さらにインマニ上流の1箇所に配置するという「タンデムツインインジェクター」にすることで、吸気バルブから遠い位置にあるインジェクターがその長い道中(これを予混合距離と言います)の途中でよく空気とガソリンが混ざり合うようにしていました。

↑1990年代初頭に耐久レースで活躍した日産VRH35Zエンジン。 見ての通り吸気ポート直前とインテークマニホールド(インマニ)上流に各1箇所づつインジェクターを配置したタンデムツインインジェクター方式であることがわかります。上流のインジェクターが高回転パワーを受け持ち、下流のインジェクターがハイレスポンスを受け持つわけです。

しかしこれは何も昔の話だけではなく、現在の12ホールインジェクターでも市販の高性能スポーツバイクなどではこの「上下2段式タンデム配置ツインインジェクター」を純正採用していることからも解るように、現在であっても基本的なチューニングのやり方は同じなのです。 「今も昔も冷えすぎた空気を燃えやすい理想的な混合気にするための基本的手法は変わっていない」ということです。 とくに現在のリッターSSのような高性能バイクは多くが純正でラムエアーシステムを採用しているため、真冬になると吸気温度が下がりすぎてしまいとても吸気ポート直前のシングルインジェクターだけではガソリンが綺麗に霧化および気化してくれないので、ハイレスポンスとパワー(と燃費も)を両立させるためにはこのタンデムツインインジェクター方式は必須なシステムなのです。

↑私の使用しているSARDの300cc 12ホールインジェクターの噴射口。 昔の1ホールインジェクターに比べ格段にガソリンの微粒子化は向上しましたが、それでも吸気温度が低くなりすぎると充分な霧化および気化をさせるには様々な対策が必要になってくるのです。

実際、私の車も最高速アタックなどで全開走行するときに体感できるのですが、外気温が5度を下回ると吸気温度が低くなりすぎてガソリンの霧化が悪化するため、かえって高回転でパワーが伸びません (インタークーラーウォータースプレーを作動させるとさらにパワーダウンするくらいなのです!)。 むしろ気温がもう少し高い5度から10度くらいのときがもっともパワーが出るように感じます。 やはりいくら霧化特性に優れた12ホールインジェクターでもポート直前の1箇所のインジェクターでは冷えすぎた空気ではダメなのです。

よくエアクリーナーでも一生懸命冷えた空気を取り込もうと様々な改造を見ますが「過ぎたるは猶及ばざるが如し」で、インジェクター位置が純正そのままでは冷えれば冷えるほど良いというわけではないのです。 夏場はそれで良いのですが、冬に全開走行すると吸気温度が冷え過ぎることは逆効果であることがよくわかります。

徹底的に吸気温度の低下を目指しその効果を最大限活かすなら、究極はやはりタンデムツイン

インジェクター方式を採り入れることがベストです。

ここまでの話でわかると思いますが、一般的なポート直前の1箇所のインジェクター配置のエンジンではやたら吸気温度の低下ばかり目指しても限度がある訳で、ある一定の温度以下になるとガソリンの霧化効率が低下してかえってパワーダウンしてしまうというわけです。 これらの要素から考えると、市販のエンジンであれば効率の良い吸気温度の下限はNAで20度から30度、ターボで30度から40度くらいになると思います(注:ここで言っている吸気温度とはインテークマニホールド或いは吸気ポートを通過する際の温度、つまり空気とガソリンが混合気になる直前の温度です。エアクリーナー吸入部分の空気温度ではありません)。 これ以下の温度ではとくに高回転、フルパワー時のエンジン性能は低下していくはずです。 とくに、燃料が空気と混ざり合い、気化するまでの時間が短い(予混合時間が短い)高回転域でのパワーダウンが顕著になるでしょう。 ですので、純正の吸気ポート直前1箇所のインジェクター位置のままでは限界があり、吸気温度は低ければ低いほど良いという単純な思考ではうまくいかないのが現実なのです。

これよりさらに、吸気温度を下げてパワーアップさせたいのならば、大改造になってしまいますが、前述したレーシングエンジンやスポーツバイクエンジンを参考に、タンデムツインインジェクター配置への改造を視野に入れるのも一考する価値があると思います。

つまり純正のインジェクターに追加して、インテークマニホールド上部にもインジェクターを追加するわけです。

こう書くと昔からある追加インジェクターによるチューニングと同じようなものと考える方もいると思いますが、昔の追加インジェクターチューンはあくまでもインテークパイプやサージタンクに1本ないし2本のインジェクターを追加するだけでしたので、各シリンダーに均等にガソリンが行き届くわけではありませんでした。 だから空燃比が各気筒でバラついてしまうという大きな問題があったのです。

それに対してタンデムツインインジェクター配置は、各気筒のインマニに1本づつインジェクターを追加配置するので、空燃比のバラつきもなく、無駄のない燃料供給が可能になります。 ただし、これも単純にインジェクターを追加すればいいというわけではなく、供給する燃料の総量は変わらないわけですので、各々のインジェクター噴射量は半分で済むわけですから、メインインジェクターのサイズダウンをしたうえで、追加インジェクターで補うということになります。 なお、通常はこの上流に追加するインジェクターの向きはメインインジェクターと180度反対の位置につけます。これは混合気の偏りを防ぐためです。 また、インジェクターの取り付け角度も重要です。 インマニを流れる吸気流速によって噴射されたガソリンは向きを曲げられますから、それを充分考慮に入れた最適な角度で噴射させなけばなりません。

当然、それをコントロールするメインコンピューター(ECU)もそれぞれのインジェクターを独立して噴射時間および噴射タイミングをコントロールできるものでなければならないので、純正ECUにサブコンなどのお手軽な制御では無理ですので、HKS F-CON V Proのような高性能フルコンが必要になります。

当然、それをセッティングするチューナーにもかなり高度なチューニングテクニック、技術力が求められます。

この「タンデムツインインジェクター」はなかなか難易度の高い改造になりますが、しかし、ここまでやってはじめて「冷えすぎた吸気温度」でも充分にガソリンを霧化、気化させることができ、効果的なパワーアップにつなげることができるのです。

なお、前述したVRH35Zエンジンでは上下2つのインジェクターは同じ噴射量、同じタイミングの完全同時噴射だったようです。 まぁ、あの時代はまだECUも8ビットの時代でしたから処理速度も遅く、繊細で複雑かつ高速処理制御ができなかったから仕方ないことでしょう。

タンデムツインインジェクターについての補足

最近の若い人はこのタンデムツインインジェクターをオートバイの先進技術だと思い込んでいる人がいるようですが、前述した通り、4輪ではすでにレースでは80年代から使われていますし、市販車でもたとえば90年代後半にはすでN15日産パルサーVZ-R N1がタンデムツインインジェクターを採用しています。 バイクより車のほうがずっとインジェクションの技術では先行しているのです。

シングルインジェクターの場合はレスポンスとピークパワーのどちらを優先するかでインジェクターの取り付け位置が変わる。

もし、上記ツインインジェクター化が困難な場合は、重視する走りのステージによって1つのインジェクターのまま、その取り付け位置を変更することも有効になります。 前述したように、低い吸気温度でパワーを出したい場合は吸気バルブから遠いほど予混合距離(予混合期間)が長くとれるので、インジェクターはインマニの上流に取り付けたほうが有利になります。しかし、これはレスポンス面では悪化します。 このへんのバランスを考えながら最適なインジェクター位置を決めるのです。

↑ノーマルのように吸気バルブからインジェクターまでの距離が近いとレスポンスは良いが、吸気温度が低くなりすぎたときに高回転でパワーダウンし、逆に吸気バルブから遠いとレスポンスは犠牲になるが、吸気温度が低くなっても高回転でパワーアップさせることができます。 シングルインジェクターで高度なチューニングをする場合はこのへんのバランスを考えながらインジェクターの取り付け位置をよく検討する必要があるわけです。

インジェクター位置と吸気温度には密接な関係がありますので、サージタンクやインテークマニホールドを改造、あるいは新規製作するときはついでなのでこのあたりもよく再検討したほうがより効果的でしょう。

結論として

「吸気温度は決して低ければ低いほど良いというわけではない。 インジェクターの霧化能力と合わせてよく考えて検討し、最良の混合気状態にできるよう最適な温度となるように制御するのがベストである」ということです。 くり返しになりますが、吸気温度は空気だけを見ていても片手落ちなのです。 あくまでも「ガソリンと混ざったあとの混合気をどう最良の状態にするのか」まで考えなければトータルチューニングはできません。 「吸気温度は低ければ低いほどパワーが出る」というのはこうした燃料噴射系チューニングがきちんとできていることが前提での話なのです。

しかし、ほとんどの人はエアクリーナー部分やインタークーラー部分、サージタンク内部の温度だけを見て吸気温度を語っているだけで、こうしたインジェクターの霧化、気化効率までを含めた「本当の意味での最適な吸気温度」まで考えが回っている人はまずいませんね。 「とにかく冷やせばいい」と単純に考えている人がほとんどのような気がします。 エンジンチューニングというのは何事もそうですが、どこか1箇所だけを見ていては総合性能は上がらないということを認識する必要があります。 「木を見て森を見ず」ではなく広い視点で見ることが大切なのです。

私のジムニーの場合のエアクリーナーの熱対策

↑私のJA22ジムニーのエアクリーナーボックスとキノクニ(RUN-MAX)のエアクリーナーと遮熱板(写真は2005年当時のエアクリーナーがまだ新品時のもの)。

ボックスのすぐ脇にアルミ板+遮熱シートで製作したヒートインシュレーターが設置してありますが、これはエンジンの熱気を防ぐよりもエキマニなどからの輻射熱を反射させることが目的です。エアクリーナーボックスがメッキしてあるのも輻射熱を反射させるのに一役買っています。

そもそも旧型ジムニーのエアクリーナーケースの位置は最悪で、本当なら冷えた空気を取り込みやすいエンジンルーム前方にボックスを置きたいところですが、なぜか旧型ジムニーはもっともエンジンの熱気の影響を受けやすいエンジンルーム後方、それも高温になる排気側に鎮座しています。 純正なのにまったくもってお粗末な設計です。 ですが、私は現時点ではこれ以上のエアクリーナーの熱対策は考えていません。 と言うのも、冬季は前述したように、むしろ吸気温度が冷えすぎてしまうくらいなのでこれ以上冷やす必要がないことと、逆に真夏はそもそも油温が上がりやすいためハードな走りはしないので、夏はシーズンオフと割り切って吸気温上昇によるパワーダウンは気にしても意味がないという考えからです。 気温が下がる秋から冬、春先までパフォーマンスが楽しめればそれでいいということです。こういう割り切りもストリートチューンでは必要ではないかと思います。

夏の暑い時期にエンジンを酷使して無理させても仕方ないですからね。 それに、断熱ばかりを考えて下手にインダクションボックスなどでエアフィルター周囲を囲んでしまって吸気抵抗を増やしてしまったら、そちらの害のほうが大きくなりかえってパワーダウンになりかねません。 私はエアクリーナーもインタークーラーも温度低下も重要なことながらこの通気抵抗(吸気抵抗)をいかに低減するかのほうがエンジン性能、とくにブーストの立ち上がりや全開性能にとっては大切ではないかと考えておりますので。

これも「木を見て森を見ず」じゃないですが、吸気温度低下ばかりに目が行って、吸気抵抗の低減がおろそかになってしまったら結局、エンジン性能は低下してしまう。 やっぱり「チューニングはバランス」なんですよね。

吸気温度と吸気抵抗、ちょうどいいところで折り合いをつけないとダメってことです。 純粋なレーシングカーみたいに両者が両立できる設計ができれば完璧ですが、市販車のエンジンルームレイアウトでそれを実現するのは現実的に困難。だからこそ妥協や割り切りも必要なのです。 まさに「二兎追うものは一兎をも得ず」だから私はエアクリーナー段階での吸気温度低減のほうはある程度まででいい、冒頭でも書いたようにターボではどんなにエアクリーナーが吸い込む吸気温度を低くしようが過給すればどうせ150度あたりまで昇温してしまうのですから、そこから先の温度低下はインタークーラーの仕事であり、最終的にはそちらの冷却効果のほうが支配的になります。 だから私はターボエンジンではエアクリーナーの段階では吸気温度低下よりも吸気抵抗の低減のほうがパワーアップには効果は大きいと考え、エアクリ段階での吸気温度低下よりもそっちを優先して追求し、極力抵抗(圧力損失)の少ない軽自動車には大きすぎると思えるほどのビッグサイズのエアフィルターを用い、さらにエアクリーナーケース内部の拡大加工およびエアファンネルの設置、サクションパイプも拡大加工、ステンレスパイプ製サクションパイプにするなど徹底的に吸気抵抗の低減を目指しているのです。 それが今の私の吸気系の考え方です。

スロットルボディおよびインマニのクーラント循環用ホースについて

さて、ここまで吸気温度について書いてきましたが、吸気温度低下に躍起になっている方、スロットルボディのクーラント(LLC)ホースはどう処理されているでしょうか? 案外と無頓着なままってことが多いのではないでしょうか。 ご存知のようにスロットルボディには暖機運転時にアイドリング回転数をアップせるためと、凍結防止のためにクーラントが循環するように冷却水ホースが接続されています。 これは冬季や寒冷地ではウォームアップ上重要な機能ですが、凍結の危険性の少ない地域や、ましてや夏期には不要と言ってもいい機能です。 むしろ、エンジンが完全に暖まってしまった後は温水で無駄にスロットルボディ全体を暖めてしまい、それこそ吸気温度を上昇させる原因になるだけです。 いくら工夫をこらしてエアクリーナーに冷気を吸わせ、インタークーラーで冷やしても、最後のスロットルボディで吸気温度を暖めてしまっては本末転倒です。

そこで多少、暖機時のアイドルアップ時間が長引いてしまうかもしれませんが、いっそのことスロットルボディへのクーラントのホースを外してバイパスさせてみるというのも吸気温度低減に効果がある「かも」しれません。

とくにサーキット専用車ならこんな機能はまったく不要ですからね。 また、車種によってはスロットルボディだけでなくインテークマニホールドにも冷却水を循環させているエンジンもありますので、これもバイパスさせると吸気温度低下に効果があるかもしれません。

現実に、日産R35 GT-Rも発売当初モデルはこのスロットルボディへのクーラント配管があったのですが、マイナーチェンジした現行モデルではこの配管は撤去されました(寒冷地仕様車は不明)。これは「パワー優先」で吸気温度低下を目的とした「メーカーによる純正チューンナップ」だと思われます。 メーカー純正でやるくらいなのですから、やはりスロットルボディを暖めないことはパワーアップに有効なのでしょう。

↑私のK6Aエンジンのスロットルボディ(41φ径ビッグスロットル)。

写真下の両側に出ているパイプがクーラントを循環させるホース接続パイプです。 暖機運転には必要な機能ですが、エンジンが温まった後はスロットルボディを無駄に高温にするだけなので、結果として吸気温度を高めてしまい逆効果になってしまいます。 なので、これを接続せずにバイパスさせるというのも吸気温度低減、とくに夏場の吸気温度低下に効果があるかもしれません。

私はまだ試していませんけど、興味のある方は実験してみるのもいいかもしれません。ただし、冬季の暖機運転や寒冷地でのアイシング発生など、支障が出るリスクはありますので、たとえば、完全にバイパスさせるのではなく、ホース途中に水栓コックのようなものを付けて、夏場はコックを閉めてスロットルボディへのLLCの循環をカット、冬場はコックを開けてLLCを循環させるという手動で切り換える方法もありかなと考えています。

<蛇足ですが>

最近、日産やスズキのエンジンでツインインジェクターを採用した乗用車エンジンを見ますが、これは同じツインインジェクターでも、今回話題にしたような「タンデム配置」ではなく、単純に吸気ポート直前の同じ位置に並列にインジェクターを配置した「パラレル配置」です。

この配置方法も80年代から研究はされていましたが、その頃のインジェクターではガソリン粒子径が大きく、充分な霧化ができなかったためうまくいきませんでしたが、現在では18ホールインジェクターなどの技術でガソリンの超微粒子化が可能になったため、こういうエンジンが実現しました。

これは、通常のポート噴射と筒内噴射(直噴)の中間のシステムと考えていいと思います。 ただしこれはパワーアップのためではなく、燃費および排ガス浄化性能向上のためのシステムです。

↑日産のデュアルインジェクターのカットモデル。 18ホールと多噴口のインジェクターを各吸気ポートに1本づつ、つまり1シリンダーあたり2本配置することでよりガソリン粒子の微細化を実現しています。スズキの「デュアルジェットエンジン」も基本的にはこれと同じです。

※注記

書くまでもないですが、今回の記述はすべてポート噴射エンジンについてです。 ガソリン直噴(筒内噴射)エンジンは除外して考えて下さい。

↑なお、近年のガソリン直噴エンジンは最近話題のPM2.5と呼ばれる排気ガスに含まれる有害微粒子の排出量がポート噴射エンジンの10倍以上だそうで、目に見えない大量のススが出ているそうです。 これは直噴エンジンではポート噴射エンジン以上に燃料の霧化、気化効率が悪い(予混合時間が無いに等しいわけですから)ため、ガソリン粒子径が大きく不完全燃焼してしまう燃料が多いからだと考えられます。

第2世代から第3世代に進化して欠点が見当たらなくなったと思っていた現在の直噴エンジンも決して環境に優しいというわけではないということですね。 GDIの時代からだいぶ改善されたとは言え、いまだに直噴エンジンではこの「スス」の問題はつきまとっているということです。 GDIやD-4の時代は「目に見えるスス」が、現在は「目に見えないスス」が大量に発生しているというわけです。 この対策として近々、このPM2.5に対しての法律規制も日本や欧州ではじまるようです。 おそらくディーゼルエンジンのDPFと同様、PMフィルターのようなものを装着するのでしょう。ますます排気抵抗が大きくなり、チューニングには不向きになりますね。 まぁ、現時点でも直噴エンジンはチューンナップには向きませんけど。