ブローオフバルブについて

たまに「ブローオフバルブを外したらいけないのか」と言われる方がいます。

極論から言えば、なくてもエンジンの運転上は別段問題はありません。 というか、昔はブローオフなどついていないのがほとんどでしたので。

結局、この種の「必要か不要か」というのは両極端なのでなかなか難しく、なかったからといって壊れるようなものではありませんが、メーカーがはじめからつけているからには少なからず意味があります。

結局、そのパーツの役割や構造、原理を理解していけばついている理由や外すことによってのメリット、デメリットも解ると思うのでおのずと答えは出てくるものですが、こういうのは正解とか不正解とかではなく、100人いれば100通りの考え方があって当然ですので、とりあえず

私なりの見解を書いてみたいと思います。

まずブローオフバルブの役割ですが、これは言うまでもなく、アンチラグシステムのひとつです。

つまり、ブーストをかけて走っているとき、瞬間にアクセルオフ→オンにした瞬間などにターボのレスポンスを可能な限り落さないようにするためのものです。

ここでよく勘違いされる方も多いですが「MTならブローオフは効果あるけど、ATでは必要がない」と考えられている点です。 ですが、これは根本的に間違いです。

ブローオフの効果はあくまでもアクセルコントロール時のエンジンレスポンスを維持するためにありますので、ギアがホールド状態でも、たとえばコーナリング中にアクセルワークでクルマの姿勢をコントロールするときなどのスロットルワーク時にこそもっとも効果を発揮するものなので、MT、ATの問題ではありません。(ただ、実際のところ市販車レベルのエンジンレスポンスでブローオフが本当に効果的かどうかという疑問はありますので、あくまで理屈の上での話です)ですので、当然ながらこうしたアンチラグ効果は風量の小さいタービンよりも、風量の大きなタービンのほうが顕著に現れますし、低ブーストよりも高ブーストのほうがより効果があります。

ちなみに、ATと言ってもよくドラッグレースで使用するようにアクセルONのまま走り続けるような場合は、もちろんブローオフバルブは必要ありません。

それと、よくタービンの保護も言われますが、これはとくにタービン/コンプレッサーホイールの大きいタービンではかなりの意味がありますし、とくにブーストを大幅に高く設定している場合は、それだけバックタービン圧も高くなりますので、無視できない効果はあります。

ただ、純正でついているような小さなタービンの場合はあまり大きな差はないかもしれません。

蛇足ですが、もしブローオフをつけない場合、なるべく大きなインタークーラーをつけることでスロットルからの逆流をそこで緩衝させることができるので、それもタービン保護にはなります。

以上のように、ブローオフバルブの効果というのはその人の乗り方、さらに言えばブローオフの効果を活かせるだけのエンジンのレスポンスチューンがされているかどうか、さらにドライバーがそれを活かせるアクセルワークができるかどうかなどによっても活かされるレスポンスのレベルも変わります。

具体的には、アクセルワークだけでクルマの姿勢を自在にコントロールできるレベルの人ならば、少なからず適正な性能のブローオフならば効果は活かせるのではないかと思います。

それと、現在市販されている社外ブローオフバルブは多くが音を出すことを重点に置いた、ファッション性重視のものが多いのも事実です。

ですが、以前にも書いたことがありますがとくにK6Aエンジンは純正でもブーストが高く、とくに1kgf/cm^2以上では純正ブローオフのリリーフ機能が働いてしまうために、ターボの風量をロスしていることも事実ですので、このような場合はたとえ音重視であってもリリーフしにくい社外の強化ブローオフに交換するメリットはあります。 ブーストを上げている場合は明らかに加速に違いが体感できるほどです。

しかし、メーカーがなぜ標準でブローオフバルブを装備するのかという意味はやや違うところにあります。

これは単純に言えば、やはりタービンおよびエンジンの保護が第一ということです。

とは言っても、ブローオフがないからタービンが壊れるという意味ではなく、あくまで平均寿命の問題と考えたほうがいいでしょう。

メーカーは当然ながら数十万キロ、場合によっては数百万キロという耐久性テストをおこないます。

その中で得られたデーターの平均で、たとえばブローオフバルブありとなしではどの程度の耐久性に差が出るのかということから、ブローオフバルブの必要性があるためにつけているわけです。

メーカー、とくにスズキのような合理性を重視するメーカーはコストダウンを第一に考えますから、他の派手な装備のように、ついていることで宣伝になったり、商品性が高まったり、ユーザーの満足度、付加価値のあるものであれば、たいして機能的には意味がなくてもそれを上回る商品的魅力があればつけるでしょうが、ブローオフバルブは別についているからといって宣伝にもなりませんし、カタログその他にも載せて高性能をアピールできるようなものでもありません。

こんな地味なパーツですから、意味がなかったらメーカーはコストをかけて装備するわけがない訳です。

また、もうひとつのエンジンの保護の意味では、いわゆるポップオフバルブ、つまりリリーフバルブとしての機能を持たせていることがあります。

K6Aのブローオフもそうですが、よくブーストを上げるとノーマルのブローオフバルブではエアが漏れると言われますが、わざとそうすることによって万が一のオーバーブースト時に圧力を少しでも逃がすことでエンジンを保護してやる機能を持たせているわけです。

つまり、チューニングパーツとしてのブローオフバルブと、純正装備のブローオフバルブとでは根本的に目的が異なると言っても良いと思います。

これと関連することで、重要な点なのですがK6A、F6A問わずですがスズキのエンジンのブローオフバルブのついている位置があまり良くありません。

スズキのエンジンはブローオフバルブがインタークーラーとターボコンプレッサーの間についており、これだとスロットルバルブを閉じたときにせき止められ逆流してきた圧縮空気の距離が長くなってしまうために、次にアクセルを開けたときのレスポンスが劣ってしまうのです。

また、この位置だと圧力の伝達する順番から考えて、ブーストの立ち上がり時にブローオフからブーストが漏れてしまうことがあり、ブーストの立ち上がり、加速力をロスしてしまうことがあります。

この理由は、前述しましたようにメーカーの考えるブローオフバルブの機能が、エンジンおよびタービンの保護、寿命延長にあるため、わずかなレスポンスの差は無視していることが理由でもあります。

ですので、チューニングパーツとして考えるのであれば、ブローオフバルブはできるだけスロットルバルブの直前、少なくともインタークーラーとスロットルバルブの間につけることが常識です。

ちなみに、私のJA22もインタークーラーとスロットルバルブの間のパイプにブローオフをつけています。

これによりレスポンスはかなり改善されます。

私も市販されているすべてのブローオフバルブを見たわけではありませんが、できるだけ機能を追求するとTRUSTやHKSのレーシングタイプくらいしかないのではと思われます。

とくにTRUSTのものはタイプSでもかなり質実剛健に機能重視に造られていると思います。

それと大気解放についてですが、ブローオフバルブは通常、ブローバイガスの戻りよりも下流にあります

ので、当然ながらブローオフバルブから放出される空気にはブローバイガスの有害成分が含まれますので

公害防止の観点からも本来はサクションパイプに戻すのが筋です。

基本的には戻さないと車検にも通らないことになっております。

なお、スズキのエンジンの場合は吸気量計測を圧力センサーによっておこなっておりますので、たとえば

エアフロで計測しているエンジンのように、大気解放にしたからと言って吸入空気量と計測値の誤差に

よって空燃比が一時的に狂ってエンストするとかの不都合は基本的には出ません。

余談ですが

以下の図は量産車ではじめてブローオフバルブを採用した1974年のポルシェの930/50型エンジンの吸気/排気系統の略図です。

↑この青い四角で囲った部分がブローオフバルブです。

ブローオフバルブというのはもともとポルシェの特許で、市販車ではこの930/50ターボエンジンから装着されていたようです。

ちなみに、左隣にあるブローオフに似たものはブースト圧をコントロールするウエイストゲートです。

国産車の場合はこのゲートはタービンの排気ハウジングに一体となっていることがほとんどですが、ハイパワーターボの場合はこのように独立している場合が多いです。 これは、独立していたほうがブーストの立ち上がりに有利で排気の抜けも良く、また、高いブーストでも安定しているためです。

その意味から考えれば、スカイラインGT-RのGr.A仕様は市販車と同じタービン一体のウエイストゲートのままで600馬力以上を出してレースしていたのですから、ある意味驚異的と言えます。

それと、たまにターボ排気ハウジングのアウトレットパイプで、タービンブレードからの流れとウエイストゲートからの流れを別のパイプに別けて、ウエイストゲートからの排気をそのままシャーシ裏に解放している製品を見ますが、あれは危険極まりないのでやるべきではありません。

知っての通り、ターボエンジンは濃いめの空燃比であり、程度の差こそあれ常にアフターファイアーを吹いているもので、たとえアフターファイアー音が出てなくても火を吹いているのが一般的です。

また、通常走行時でも排気ガスはターボ通過後でも高負荷時には700度以上の温度にもなりますので、こうした高温のガスがシャーシ裏で解放され続けることは非常に危険です。

シャーシ裏側などでドライバーが気がつかないまま部分的に高温となり、それが元で車両火災になりかねず、最悪は燃料パイプなどに引火したらどうなるかを考えればいかに危険な行為かがわかると思います。 安全のため排気は途中で切断せず、きちんと後方まで引いてくることが最低条件です。

また、それ以前にウエイストゲートからの排気を消音せずにそのまま解放すると、その排気音によってノッキング音が聞きとれないため、エンジンブローを回避できないことにも繋がります。

このようなパーツは百害あって一利なしです。

話をブローオフバルブに戻しますが、昔のターボは現在のハイレスポンスターボに比べればかなりかったるいものでしたので、ブローオフの効果も現在のクルマ以上に大きかったでしょう。

国産車に標準装着されるようになったのはつい最近と言っても過言ではなく、1980年代の終わり頃からとなります。 多くの場合はリサーキュレーション(循環)バルブなどという名称になっています。