K6Aエンジンの特徴:「カタログに表れないパワーカーブ変化」について

先日、JB23ジムニーがマイナーチェンジして「10型」になりましたが、その際、タコメーター上のレッドゾーンがそれまでよりさらに500rpm引き下げられ7000rpmとなる変更がなされました。

↑JB23-10型のメーターパネル。レッドゾーンが7000rpmとなっています。 なお、レッドゾーンが引き下げられてもミッションやトランスファー、デフなどのギアレシオには一切変更はありません。

なので、高速巡行時のエンジン回転数が下がって燃費が向上するとか実用上のメリットは何もありません。

現実にカタログ上のJC08モード燃費は変わりませんので。 単純に使える回転域が狭くなったというだけのユーザーには何のメリットもない変更です。

時代とともに次第に「低回転型、実用域重視」になっていくK6Aエンジン

旧規格のK6Aエンジンのレッドゾーンが8500rpmであったことを考えると、新規格になって7500rpmに引き下げられ、今回、さらに500rpm引き下げられたことになります。 この理由について表向きはメーカーはとくに機械的な変更は発表していませんが、私の推測ではすでに8型から変更されていたものと考えており、おそらくバルブスプリングがより反発力の弱いものに変えられ、フリクションロスの低減と同時に、タペット打音の低減を図ったものではないかと「憶測」しています。

現実に、旧規格K6Aと新規格K6Aではバルブスプリングが変更されており、その一例を挙げますと、旧規格K6Aは28.5mm圧縮時の反発力は13.5kgf~15.5kgfなのに対して、新規格K6Aは同じく28.5mm圧縮時の反発力が9.7kgf~11.3kgfと弱められているのです。 しかもこれはあくまでも一例で、新規格K6Aにはこの他にも数種類のバルブスプリングが存在していて吸気側、排気側で異なるものもあります。

↑バルブスプリングテスターによるバルブスプリングの反発力の計測の様子。

当然、バルブスプリングのバネレートあるいは反発力、セット圧が下がれば高回転でのサージング限界やバルブジャンプ、バウンスの限界が下がってしまうわけですので、レッドゾーンやレブリミッターも当然引き下げられてしまうというわけです。 また、これは未確認ですが、フリクションロス低減のためにピストンリングの張力も低くなっている可能性もあります。 それと、あともう一つの理由は、8型から「ダブル触媒」になったことにより、排気抵抗が増加したことでそれまでより高回転が使いにくくなった、というよりも高回転域を使っても意味がなくなったことによるレッドゾーン変更という意味も考えられます。

↑JB23-8型以降のジムニーはJC08モード排ガス規制に対応させるためにターボ直後に第1触媒、その後方フロントパイプに第2触媒を装着した「ダブル触媒(タンデム触媒)」になりました。 ことのことにより高回転でより「ふん詰まる」ようになったため、これもレッドゾーンの引き下げの理由のひとつではないかと推測します。

↑これはJA22ジムニーのメーターパネル。 このように旧規格K6Aターボエンジンのレッドゾーンは8500rpmもありました。 これはやはり同じ時代に生産されていたHB21SアルトワークスRの存在が大きかったためでしょうね。バルブスプリング張力も強く、パーツもワークスRとすべて共通ですし。

それを考えると現行のK6Aエンジンがいかに「牙を抜かれた」軟弱なものになったことかがわかります。

↑こちらは初代アルトワークスF5Aターボのメーターパネル。 なんとレッドゾーンは9500rpm!

この車は私も乗ったことがありますが、軽い車体と相まってほんとに「瞬時に」このレッドゾーンまで一気に吹き上がるのです。その「爽快感」と言ったらありません。 ほんとに楽しいクルマでした。

やっぱり軽のツインカムターボエンジンはこうでなくちゃいけません。

最近のK6Aエンジンのパワーチェックグラフから見る「違い」

K6Aエンジンの馬力、およびトルクのカタログスペック上の数値は64PS/6500rpm、10.5kg-m/3500rpm(JB23-1型だけは圧縮比が高いので10.8kg-m/3500rpm、また、ワークスRは11.0kg-m/3500rpmです)。

この基本数値は旧規格から現在まで変わっていません。ただし、ジムニー以外の横置きのK6AターボエンジンだけはCVTミッションとの兼ね合いもありデチューンされ、最高出力回転数が引き下げられ64PS/6000rpmに、最大トルクも9.7kg-m/3000rpmと大幅に引き下げられています。 つまり、現行ではジムニー用のK6Aがもっともパワー、トルクの出ている仕様となっているのです。 スポーツカーでもないのに意外ですけどね。

それで、たとえば私のJA22のような旧規格K6Aエンジンの時代はおそらくほぼこのカタログスペック通りのピークパワー回転数だと思われます。 これは、実際に4速ギアあたりで高負荷をかけながらフルブーストで全開加速していくとこの6500rpmあたりでパワーのピークの「山」を感じることができることから体感的にも感じ取ることができます。しかし、新規格K6Aになってインマニ長さが長くなってより低回転重視になり、カムのプロファイルなども低速トルク重視型になり、とくにシリンダーヘッドが変わってから(例の燃焼室形状がハート型になってからのエンジン)のK6Aエンジンでは、カタログスペック上のピークパワー数値は変わってないのですが、現実にはより低回転よりにピークポイントが移っているようです。

↑これは比較的初期の新規格K6Aエンジンのダイナパックのグラフですが、パワーピークはカタログスペックにほぼ近い6500rpmあたりまで伸びています。 最大トルクピークもほぼカタログ通りの3500rpm付近で出ています。 新規格K6Aエンジンも初期の頃はちゃんとカタログデータに近いものだったのです。

↑これは同じ新規格K6AでもJB23-6型のダイナパックのグラフ。 見ての通り、パワーピークがカタログ値よりも約1000rpmも低い5500rpm付近まで落ちています。 カタログデータとは大きな違いです。

ここまで大きく違うとまったく違うエンジンと言っても過言ではありません。

他のショップやメーカーのシャーシダイナモ(ローラーシャシダイでも)を見てもだいたい同じような傾向で、やはりカタログスペックの表記は変わっていなくても、最近のJB23ジムニーのK6Aエンジンのパワーのピークはカタログ上の数値より約1000rpmほど下がっており、現実にはより低回転トルク、実用域重視のエンジン特性になるようにK6Aエンジンは微妙に、というよりかなりマイナーチェンジして変わってきているようです。

↑これもとあるショップでのJB23ジムニーのパワーチェックグラフ。 左のグラフはカタログに近い6500rpmでピークが出ていますが、右のグラフはカタログより1000rpmも低い5500rpmでピークとなっています。

(注:これはあくまでパワーカーブの特性を比較するためですので、馬力の絶対値はとりあえず無視してください。ともにパワーアップしてあるエンジンですが、カムなど、エンジン本体はあくまでノーマルのままです)

これを見ても、やはり「新型になるほどパワーのピークは低回転寄りになっている」ことがよくわかります。

このことはストリート重視やオフロード走行重視においてはより扱いやすく乗りやすいトルク特性となるので好ましいことなのでしょうが、逆に「高回転パワーを重視したチューニング」をするとなるとノーマル状態でのチューニングに対するベースポテンシャルは下がってしまっているということになります。

この「絶対的なパワーよりも実用域での扱いやすさ重視」という変化がレッドゾーンが次第に引き下げられている要因のひとつなのでしょう。

以上のような理由から「高回転パワー重視のチューニングをするなら旧規格K6Aが有利と言える」

↑これは旧規格K6Aエンジンのパワー、トルクカーブグラフ。 この時代や、新規格になっても初期の頃はほぼこのカタログ通りのパワーカーブが出ていたと思われますが、その後マイナーチェンジを重ねた現在でもスズキはこのグラフおよびスペックをそのまま使い回しているため、カタログスペックと現実のエンジンとの相違が大きく出てしまっているものと思います。ですので、このパワー、トルクグラフは現行のK6Aエンジンにはまったく当てはまらなくなってしまっているのです。

冒頭でも書きましたように、旧規格K6Aはバルブスプリングも強く、インマニ長さも短く、基準ブースト圧も高く、燃焼室形状も理想的なペントルーフ型をしているなど、ベースポテンシャルからして高回転パワーを出しやすいものとなっていたのです。 反面、逆に言えば低速トルクについては現行のK6Aエンジンにはやや劣りますが、あくまで最高出力を上げるという目的ならば「同じトルクならいかに高い回転数で発生させるか」が重要なので、単純にパワーアップおよび高回転化しやすいという意味では、やはり旧規格K6Aのほうが有利なのです。

↑旧規格K6Aエンジンがなぜ高回転パワー重視でチューニングベースに優れていたかという大きな理由はやはりこの競技ベース車のHB21SアルトワークスRの存在があったからでしょう。 逆に新規格の現行のK6Aエンジン搭載車にはこのようなスポーツモデル車種がないため、高回転域でのパワーよりも実用域のトルク特性や燃費、環境性能のほうが重視されているわけです。そのため、次第に低中速重視のセッティングになったわけです。

ただ、もちろん新規格K6Aでもエンジン内部に手を入れて、高回転化に必要なパーツに交換したり、加工を施せばパワー、トルク特性をより高回転側に振ることは可能です。 しかし、そのためにはたとえば、ただハイカムをポンと入れればいいとか単純なものではなく、インマニ長さを短くしたり、サージタンク容量を変更したり、バルブスプリングの変更、燃焼室形状を旧規格K6Aと同じにする(当然、圧縮比も見直す)などエンジンの基本になる部分に高度なノウハウのいるチューニングが必要になりますので、それなりの経験と学識、理論を持った信頼できるチューナーに任せる必要があると思います。 ヘボなチューナーにやらせると逆に最悪のエンジンになりかねませんので、おこなうのならチューニングショップ選びには慎重に。

HB21S アルトワークスR純正カムシャフト

↑流用によく使われるHB21SアルトワークスR純正カムシャフト。 私のJA22ジムニーにも入れています。

ビッグタービンと併せ、このカムにより8500rpmのレッドゾーンをフルに使いきることができるようになりますし、9000rpmのレブリミッターにさえ簡単にブチ当たってしまうほどよく回ります。 おそらく私の車のエンジンの現在の仕様ではパワーのピーク点は7000rpm~7400rpm程度になっていると思われます。

なお、この「ワークスRカム」のバルタイを変更して装着している人もいるみたいですが、明確な目標があるのなら別として「より高回転でパワーを出したい」のならば、私なら「吸気側はあえてそのままにし、排気側のみ若干遅らせます」この意図が理解できる人はそれほど多くないかもしれませんね。 これは一例ですが、BNR32スカイラインGT-RのRB26DETTエンジンは標準タービンとニスモタービンでは排気側のみバルタイが異なっていたんですよ。 この理由をよく勉強してもらうと私の考えの答えが見えてくると思います。

K6Aエンジンは「腰下」は基本的に高回転化に向いている

これまで書いた旧規格と新規格の違いは、主にシリンダーヘッド側についてです。 逆にエンジン本体の腰下、つまりシリンダーブロックやクランクシャフト周りについては、旧規格も新規格もほぼ共通ですので、構造上、高回転チューニングするのには問題はありません。 K6Aエンジンはアルミブロックですが、贅沢とも言えるラダービームロアケース構造のベアリングビーム設計など、クランクまわりに高剛性な設計がなされていますし、ショートストロークのK6Aは平均ピストンスピードだけから考えれば10000rpmどころか12000rpmあたりまで対応できますし、コンロッド長さが長いため、連桿比が大きく高回転まで回してもフリクションが少なく、振動面でも有利なのです。

それだけに最新のK6Aは「高回転型の腰下に低中速型のヘッド」というなんとも中途半端な組み合わせのエンジンとなってしまっているのです。これならノーマルで乗るならR06Aエンジンのほうがバランスのいいエンジンと言えます。 これについては後述するアルトターボRSのシャーシダイナモのデータでもよく解ります。 最新のK6Aエンジンは今の時代に完全に取り残された時代遅れのエンジンになってしまいましたね。

↑K6Aエンジンの構造上の特徴のひとつ、ラダービームロアケース。本格的なレーシングエンジン同様の高剛性な設計となっています。 これは現行のR06Aエンジンにはない「贅沢な設計」です。

なお、潤滑面では最近のK6Aはフリクションロス低減のためオイルポンプ容量(吐出量)が減らされたとの未確認情報もありますので、もしそれが真実ならオイルポンプギアを旧規格のものに交換し、さらに油圧リリーフバルブのスプリング下に1.5mm~2mm厚程度のワッシャーを入れるなどして、高回転時のオイル循環量の確保と油圧の確保をしたほうが良いと思います。私のエンジンもオーバーホール時に1.5mm厚のワッシャーを入れて若干の油圧アップをしています。

ご自身の車のK6Aエンジンに合わせたチューニングメニューを

K6Aエンジンがデビューしたのは1995年です。 つまり既に誕生から20年ほど経っていますので、その間に様々な細かい変更が加えられています。 ですので、自分の車のエンジンがどういう仕様なのかをよく調べたうえで、必要なパーツを流用、交換するなどエンジンごとに最低限必要なメニューが変わってきますので、そのへんはご注意ください。 それを考えると、K6Aエンジンに精通しているショップに相談するか、任せたほうが安心かもしれません。 あるいは、自分で年代ごとのパーツリストを集めてどのパーツがどのように変わっているかをコツコツと調べていくという地道な作業が必要かもしれません。 そういう意味ではK6Aエンジン、とくに新規格になってからのチューニングは「思い込みと曖昧な情報に踊らされることのないよう自身で確実な情報を調べることが必要」と、かなり奥が深いと言えそうです。ネット上ではけっこういい加減な情報があふれていますからね。

<おまけ その1> ホンダS660にみる「今の時代の高回転型スポーツエンジン」とは?

↑ホンダS660の「改良型」S07Aエンジン。 ベースはNシリーズのエンジンですが、各所に専用チューンが施され、とくにMTのエンジンはCVTのエンジンに比べレッドゾーンが700rpm高い7700rpmに引き上げられていることから、バルブスプリングも強化されているようです。 ですが、これは私に言わせれば現在の多くの軽自動車のエンジンが省燃費、フリクションロス低減のためにバルブスプリングが弱められているのに比較して強くされているだけのものです。 今までこのページでも書いてきたように、以前の軽自動車のエンジンは8500rpm、9500rpmなんて当たり前だったのですから、それに比べればS660の7700rpmレッドゾーンなんてのはぜんぜん高回転なんて呼べるレベルじゃないですよ。

S660のノーマルでのチューニングポテンシャルはどの程度のものか?

↑これは意外ですが、S660のターボチャージャーはそれまでのNシリーズよりもさらにサイズダウンされていて、とくに低回転からの立ち上がりを重視している設定となっています。これは車重830kgという決して軽くはないS660という車をいかにスポーツカーらしく軽快に走らせるかという目的があるのだと思います。

↑そのため、2600rpmのトルクピークを超えてからはトルクは落ちる一方で、Nシリーズのようなフラットな部分はほとんどありません。 一方で、64PSという軽自動車の自主規制馬力いっぱいいっぱいのパワーを7700rpmギリギリまで維持することで、「高回転でもパワーのタレを感じさせない演出」をする味付けとなっています。 つまり、このことはS660のノーマルタービンは純正の時点でほぼめいっぱいその性能を使い切っていると言っても過言ではなく、たとえブーストアップ、ハイオク仕様のECUチューンを施してもあまりパワーアップやフィーリングアップのマージンは少ないものと考えたほうが良いと思われます。

もちろん、それでもハイオク仕様にECUを書き換えて、ほんの少しブーストアップするだけで80PS程度は簡単に出てしまうとは思います。 まぁ、これはアルトターボRSやコペンにも同じことが言えますがね。

下記のアルトターボRSもそうですが、こういったエンジン特性にするのが最近の軽自動車ターボエンジンのトレンドなのでしょう。 まぁ、ノーマルで乗っているぶんには乗りやすく悪くないと私は思いますよ。

しかし「高回転でドカンとくる刺激」がなさすぎて私ならすぐに飽きてしまうでしょうね。

<参考データ> ノーマルのS660のシャーシダイナモによるパワーチェックデータ

↑これはS660をBOSCHのローラー式シャシダイに載せて計ったパワーテストグラフです。 本当に古い機械なので現在となってはあまり信用できませんが、それでもいちおうの参考にはなるかと思います。これによれば、後輪出力60PS、ロス馬力(損失出力)10PSとなり、エンジン出力は約70PSとなります。

しかし、このグラフと上のメーカー発表のグラフはまるで違いますね。メーカーのグラフではトップエンドの7700rpmまで64PSを維持するようになっていますが、現実はおよそ5500rpmを超えたところがパワーのピークで、その後はパワーは落ち込む一方となっています。 推測ですがこのぶんだと7700rpmではおそらく60PSを下回ると思われます。 とてもメーカー発表のグラフとは大きな食い違いがありますね。

<おまけ その2> アルトターボRSのR06Aターボエンジンのパワーチェックデータ

従来のR06AターボエンジンはミッションがCVTしかなかったため、シャーシダイナモでも正確なデータを得ることが困難でした。 それは、CVTはマニュアルモード(ギアホールドモード)でも、レッドゾーン近くまで回転を上げるとフェイルセーフが働いて勝手にシフトアップしてしまうという厄介な介入が入ることが原因のひとつです。 通常、パワーチェックは「ギアレシオ1.000にもっとも近いギア」で行うのが通例ですので、たとえばCVTマニュアルモード7段の5段目で計測したくても、トップエンドまで行く前に自動で変速してしまうのです。 もう一つのCVTの不正確性の原因は、アクセルオフしたあとの「ロス馬力」が一定でないため、駆動系のメカニカルロスが正しくグラフにあらわれないということにあります。以上の点でCVTでは参考にするにしてもあまりに不確定要素が大きいため、そのエンジンの実力が信頼に足るほどの数値が得られないのです。 ちなみによくネット上では「CVTではギアレシオが不明なのでパワーチェックができない」などという記述も見ますが、それは簡単な解決法でなんとでもなります。要するに、一定の速度(たとえば時速100km/h)でそのギア段でのエンジン回転数をプロットしておけば、あとはタイヤ外径から計算でギア比を算出すれば「近似値」は簡単に求められますので。 ですので、ギアレシオの問題は簡単に解決できるレベルのものです。 ※なお、これはすべてのCVTに当てはまるわけではありません。きちんとレッドゾーンまでギアホールドできるCVTもありますし、車種によってはトップギアで計測できるCVTもありますので。 ですので、これはあくまでもスズキ軽のCVTに限った話だとお考えください。

さて、それで今回アルトターボRSはやっと「疑似マニュアルミッション」とも言えるAGSが搭載されたことでMT車と同じ方法でパワーチェックが可能となり、これでやっと「R06Aターボエンジンの本当の実力」を知ることができるわけです。 以下の画像はある雑誌の記事ですが「参考程度」にはなるデータだと思います。

↑詳細な測定条件(気温や気圧、各種補正係数など)は不明ですが、かなり参考にはなるのではないでしょうか。

ロス馬力も入れた補正パワーは66.4PSとカタログデータを上回っています。 たしかに80年代~90年代の過激なパワー競争をしていた頃のターボ軽自動車に比べれば様々な環境対策の影響で「やっとこカタログ値をクリアーしてるレベル」のおとなしい数字ではありますが。 しかし、注目すべきはトルクのほうで、10.3kg-mと堂々と10kg-mを上回っています。これはたいしたもので、なぜなら新規格になってからのK6Aターボでは10kg-mを超えている個体はほとんどなく、実トルクはせいぜい8.5kg-m~9.0kg-mがいいところで、とてもカタログ通りの10.5kg-mにはほど遠い低いトルクしか出てませんでしたからね。 それからすればR06Aターボの10kg-mオーバーは立派です。 ただ、このグラフで気になるのは最高出力回転数である6000rpmでなぜか「トルクの谷」がある点です。これはVVTの制御が関係していると思われますが、ECUチューンでなんとかこの谷は消したいところですね。

それと、このグラフを見てもわかるように、トップエンドが7500rpmでキッチリ終わっているところを見ても、レブリミッターは7500rpmで入るようになっているようです。やはりR06Aは強度的に高回転化は厳しいエンジンなのでK6AやF6Aのように「9000rpmオーバーまで回せる」ようにはいかないのでしょう。

<参考> →R06Aエンジンのデビュー時の記事

<参考> →R06AエンジンにMTミッションが組み合わされた時の記事

<参考> →アルトターボRSの試乗記とエンジンチューニングの考察

<参考> →R06AエンジンとK6Aエンジンのクランクシャフトの強度、剛性比較

最後にひとつエンジンの「最高回転数」についてご理解をしていただきたいと思います

みなさんはエンジンの「最高回転数」という言葉を聞くとどう捉えるでしょうか? おそらく多くの人が「レブリミット」か「レッドゾーン」の回転数と考えるのではないでしょうか。でもそれは間違いです。

じつは専門的に言うと「エンジン最高回転数」というのは「最高出力回転数」のことを指すのです。つまり、レブリミッターの効く回転数とか、タコメーターでレッドゾーンの刻まれている回転数のことではないのです。

それらは「最高許容回転数」とか「限界回転数」とか「レブリミット」と呼ばれるものであり、最高回転数ではありません。つまり、本来の意味でのエンジンの最高回転数とはよく車のカタログの諸元表に記載されている「280PS/6400rpm」と書かれているその「6400rpm」こそがそのエンジンの「最高回転数」ということなのです。

エンジンチューニングは単に「回ればいい」というわけではありません。いかに高い回転数で「馬力を出すか」が重要なのです。 惰性や勢いで回っても無意味なのです。なので、上記S660のように6000rpmでフラットなままでは意味がないのです。もっと上に向かってパワーカーブを引き上げることがチューニングなのです。

ちなみによくROMチューンで「このエンジンはレッドゾーンは7500rpmなのに6400rpmまでしかマップが書かれていない」ということがありますが、これは当たり前で、上記の例で書いた「280PS/6400rpm」のエンジン言えばピークが6400rpmなのですから、そこから上のマップを書いたところで意味がないからです。

このエンジンをチューニングし、たとえば最高回転数を7500rpmまで引き上げたときにはじめてそこまでのマップを拡張することに意味があるわけです。

↑ホンダS2000のエンジンでの例。このエンジンの「最高回転数」は9000rpmではなく8300rpmなのです。

レーシングエンジンの設計者やチューナーはひとえにこの「最高回転数」をどこまで高めることができるかにその技術の多くを傾注していると言ってもいいと思います。 同じトルクならより高い回転数で出したほうが最高出力、つまりMAXパワーが上がるわけですから。仮にレッドゾーンが9000rpmのエンジンであっても最高回転数が7000rpmであれば、そこから上の2000rpmは何も意味を持ちません。 ただのオーバーレブ時の安全マージンでしかないのです。 7000rpmが最高出力点なのですから、そこを超えたら加速力(加速G)は鈍ってしまうわけですので、それ以上頑張って回したところでクルマは速くは走ってくれません。 ただ、レーシングカーと違って市販車はクロスミッションではなく各ギアのギアレシオが離れていることが多いので、レッドゾーンめいっぱいまで引っ張ってからシフトアップしないとパワーバンドを外してしまうので、場合によってはレブリミッターの効くギリギリの回転数まで回すことも仕方ないと思いますけどね。 実際、私のJA22ジムニーもとくに4速→5速にアップするとき、たとえば向い風が強い時などは8500rpmめいっぱいまで回してからチェンジしないとパワーバンドを維持できないことがあります。場合によってはレブリミッターの働く9000rpmギリギリまで回すことさえあるくらいです。