近年、アース強化に続いてこの「オルタネーターB端子~バッテリー+端子」までの充電経路の線の増設が流行っているようです。 プラスチャージラインとかプラシングとか呼び方は様々なようですが。そこで本当に変化があるのか、わりと簡単に手が入る場所なので試しにおこなってみました。
↑配線したところ。 赤く見える線が増設したラインです。
当初は2本並列で繋いでましたが、2本でも1本でも変化がなかったため最終的には1本にしました。
ただ、これによる効果かどうかを確かめる意味でもまずは、バッテリーの能力が低下していないこと、オルタネーターの能力が低下していないこと、配線(純正のプラスライン)そのものが劣化していないことが前提となります。
プラグコードなどもそうですが、わざわざ社外品に換えなくても、劣化した純正部品を新品に交換しただけで明らかに体感できるほどの変化があることは珍しくないのです。
そういったものを放置して社外品などをつけて体感的な効果があったとしても、実のところそれはそういったパーツの効果によるものではなく、単に純正パーツの経年変化による劣化がリフレッシュされただけというのが実際にはあるからです。
とくに、今回のようなチューニングの場合はバッテリーにも注意が必要です。
オルタネーターにとってバッテリーというのはいわばキャパシタ、要するに巨大なコンデンサーそのもので、アイドリング時などの低発電量の時はもちろん、走行中でも瞬間的な大電流が必要になったときにはバッテリーからも電気が供給されますので、ここぞという時にはバッテリー本体の性能も影響を与えます。
概要
このプラスチャージ線はオルタネーターのB端子とバッテリーのプラス端子を繋ぐ線で、オルタネーターで発生した電気をバッテリーと車両の各部電装品に流す大元となる線です。
これを強化することによってどういう効果があるのかという点ですが、実際の効果は別としてあくまで机上の理屈を挙げれるとすれば、以下の点が考えられます。
1)この充電系統を補強することによって電気抵抗によるロスが減ることから、オルタネーターの負担が若干とはいえ減るので、エンジンがオルターネーターを回す際の機械的負荷が軽減することで、結果としてエンジンのパワーロスが若干減る。
2)たとえば電装品をフルに使用したときなど、継続的あるいは瞬間的に大きな電力が必要になったとき、このラインの抵抗を減らしてやることで、瞬時に流せる電流量を増やしてやることによって、電圧や電流の降下が最小限になる。
3)通常、バッテリー単独状態の電圧よりもオルタネーターの発生電圧のほうが1~1.5Vほど高いので、このラインの抵抗を減らしてやることでより高い電圧を維持したまま車体側に電気を供給することができる。
…と、このような感じでしょうか。 ただ、あくまで理屈の上での話なので、実際にそれが効果があるかどうかはまた別です。
このへんは、その車種ごとにどのくらいメインケーブルやバッテリー、オルタネーター能力に余裕を持たせた設計がしてあるのかによっても変わりますし、仮に同じ車種でも電装品の装備の差によって要求される電流も変わります。 当然ながら、電装品が多く電気の消費量が多い車両ほどそれなりに効果はあるのかもしれません。
ですので、考え方としてはこれによって性能が上がるというよりは、こうした電気負荷の過大時に性能の低下を防ぐという考え方のほうが合っているような気がします。
なお、冒頭にも書いたようにバッテリーやオルタネーター(場合によっては配線やヒューズも)の劣化具合によっても効果は左右されるのではないかと思います。
私の車の場合はバッテリーは去年新品に替えたばかりで、オルタネーター本体も数年前にリビルト品に替えておりますので、年式のわりに発電および充電系統は元気な部類だと思います。
実際の作業
内容についてはあまり詳しくは書きません。 作業自体はごく単純ですが、これはけっこう危険を伴う作業なので、きちんと理屈と構造を理解してからおこなってください。
場合によっては車両火災、大袈裟ではありますが爆発することも考えられますので。
なお使用する線の太さですが、車種によって純正の配線方法は異なると思いますので一概には言えませんが、JA22の場合はバッテリー+端子とオルタネーターB端子はかなり短距離で直接繋がっていますので、その純正プラスラインに沿わせるかたち、即ちパラレルに増設する感じになります。
つまりあくまで補助線、バイパス線ですので過度に太い線は必要ありません。
このような理由から私の場合は8sqの太さのものを使用しました。 また、安全のためにヒューズは絶対にかませてください。 私のジムニーの場合はメイン電源で70A容量ですので、補助線にはその半分よりも多ければ問題はないと思いますので、だいたい40Aから50Aが適当かと思います。私は50Aを入れました。
↑図で言うと3のケーブルに沿わせるかたちになります。 図でもわかりますがJA22の場合はバッテリー、オルタネーター、スターターのプラスラインは非常に近い位置関係にありますので、ケーブルの長さはかなり短く、もともと抵抗は小さいと思います。
また、万が一のコードの被覆の損傷などによるショートを防ぐためにもスパイラルチューブやコルゲートチューブでの保護を忘れないように。 コードむき出しはあまりに危険です。
※プラスラインの場合、これをおこなっていないと車検時などに指摘されることもあります。
また、オルタネーターのB端子のキャップもきちんと被せてください。 太い線を使うとこれが閉まりにくくなりますが、決していい加減な対処はしないできっちり閉めてください。
なお、ジムニーの場合、バッテリー側はエンジンの吸気側ですのであまり熱については気にしなくても構いませんが、取り回しについては鋭角部に触れないよう、また、エンジンの振動も考えにいれてコードのたわみには余裕をもたせるなどの気遣いが必要です。
変化
まずはお約束でテスターで電圧の変化を見ます。 アイドリング時での比較です。
↑左がプラスチャージライン増設前、右がプラスチャージライン増設後。
見ての通り、ほとんど変化はありません。
これは予想通りで、そもそもこの時点で目に見えて変化があるようでは純正の設計自体に問題があるか、よほど配線が劣化しているので、変化が出るほうがおかしいと言えます。ちなみに、エンジン停止状態でのバッテリー単独時の電圧は13.7Vでした。
走行インプレッション
比較はECUの再学習を終えてからになります。
アースの場合は横着してそのまま作業する方もいるかもしれませんが、プラスチャージラインの場合は必ずバッテリー端子を外して作業しますので、ほとんどの車種でECUがリセットされますので、取り付け後すぐのインプレッションはアテになりません。
車にもよりますが、学習前の空燃比は理論空燃比より濃くなる場合があるので、そのせいでアクセルを僅かに踏み込んだあたりのトルクが上がることがあり、それをこの効果と勘違いしてしまう可能性もありますので。(私の車の場合は学習前は濃くなりすぎてかえって吹けなくなってしまうのですが)
その上での感想ですが、まず通常の街乗りではハッキリ言って体感的には何も変わりませんでした。
電装品関係、たとえばライトの明るさなどにも実感できる変化はありません。
次に、高負荷、高回転域では変わるかと思い高速域でも試してみましたが、これもとくにレスポンスやトルクの立ち上がり感など、体感的な変化は感じられません。
とりあえず少しでも数値に変化でも出れば面白いかと思い、パワーメーターiDでの数値を記録させてみました。
具体的には、同じ条件でフルスロットル加速での各ギアでの比較で、3速7000rpmまで回したとき、4速で同じく7000rpmまで回したとき、5速では6500rpmまで回したときのパワー表示を比較してみました。結果は以下の通り。
以上のように、ほとんど誤差の範囲でまったく変化はみられないと言っていいと思います。
まとめ
実際におこなっている方の中には効果があったと感じる方もいるとは思いますが、私の場合は
残念ながらあまり意味のある改造だとは思えませんでした。
それでも何らかの時の「余裕」にはなるかもしれませんので、装着したままでいます。
↑参考までに今回のテスト時の速度ピーク。 5速7700~7800rpmくらいだったかと。やはり冬場で気温が低いせいもあり夏場よりも伸びがいい感じです。